信号待ちをしていると、何処からか香ばしくて甘辛いタレの香りに鼻を擽られた。
何かのイベントで屋台でも出ていたのだろう。
香りの出所までは分からなかったけれど、夏日のような気温に混ざった、
イカ焼きのような、焼きとうもろこしのような甘辛い香りによって、
夏祭り気分を、ひと足先に味わったような気がした。
屋台は世界各地に存在しているけれど、日本の屋台は江戸時代に始まったと、
どこかで見聞きしたことがある。
そのスタイルは、時代劇などで登場するような、
ザルや籠、桶などを両端に付けた天秤状の棒を肩に担いでモノを売り歩く、
「振り売り」と呼ばれる動くスタイルの屋台と、
組み立て式の小さなお店を作り、その場で動かずにお客さんを待つ、
「立ち売り」と呼ばれるスタイルの屋台の2種類から始まったという。
振り売りスタイルでは、旬の野菜や鮮魚、調味料などの食料品や日用雑貨を扱っており、
立ち売りスタイルでは、寿司や蕎麦といった、今でいうところのファストフードを扱っていた。
このようなことを聞くと、今の私たちが知る屋台は立ち売りスタイルが起源なのだろうと思ったのだけれど、
今の屋台の起源は、第二次世界大戦の後に、時代を生き抜くために営業され始めた闇市なのだそう。
この闇市で生計を立てていたのは、主に、
開拓者として国外などに移住していたけれど敗戦によって帰国した人たちや、
戦争で夫を亡くした人や、それまで営んでいたお店を戦争の影響で失った人たち。
彼らが作り上げた闇市が私たちが知る屋台の起源だ。
今の屋台は、衛生や消防、交通や場所といった問題があるため厳しく規制されている。
だから海外のそれとは少々異なり、野外イベン以外では楽しむことができず見る機会も限られている。
しかし、福岡や一部地域では、今でも多くの魅力的な屋台が軒を連ねている。
私は福岡で何度か足を運んだことがあるのだけれど、
手軽なものから凝った本格的なものまで、様々な料理を味わうことができる上に、
非日常や人の温かみを味わうことができる、不思議で活気的な空間だったように記憶している。
立ち寄った屋台の店主の話によると、全国にある屋台の4割ほどが福岡に在るのだけれど、
規制が厳しくなっているのは、こちらも同じだそうで、年々、存続が難しくなっているのだとか。
江戸時代に始まった屋台は、闇市へとスタイルを変え、現代の屋台へと変化していた。
お祭りや野外イベントでは、メインイベントを陰から支える縁の下の力持ち的ポジションに位置しているけれど、
目にする屋台そのものにも歴史があり、
今また、昔ながらの屋台は現代の屋台スタイルへと変化しつつようだ。
暖かくなってきたこともあり、野外イベントで屋台に触れる機会も増えるかと思います。
今年は、屋台の歴史をちらり思い出しつつ、野外イベントを楽しんでみてはいかがでしょうか。
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