ジューススタンドの前を通ると、カウンターに備え付けてあるショーケースの中に
ずらりとパイナップルが並んでいた。
よく見れば、なかなか厳ついお姿だけれども、そこから放たれる甘酸っぱい香りに誘われて、
人は、この果実に手を伸ばしてしまったのだろうなと勝手な想像をした私も、
その香りに誘われるようにして、搾りたてを一杯いただくことにした。
出来上がりを待っている間、何となく作業スペースの奥に視線を向けると、
大量に積まれたパイナップルの葉が目に留まった。
パイナップルを購入するとき、私が厄介だと思っているのは、あの葉っぱだ。
観葉植物として楽しむという手もあるのだけれど、我が家には先住の観葉植物たちがいるため、
予め葉っぱが切り落とされているものを購入している。
しかし、あの立派な葉を見ると南国感があって良いものだな、と思う。
そう言えば、廃棄され続けてきたパイナップルの葉は、ピニャテックスと呼ばれる新素材として注目されている。
これは、動物たちの命を奪わずに、廃棄されるはずのパイナップルの葉から作られた
革の代替となるビーガンレザーのことだ。
私たちが楽しんでいるバッグや靴、衣類の素材として革が使われているものがある。
きっと昔は、皮革製品と言えば、大切に長く使い続けるものに使われていたのだろうけれど、
昨今では、何となく消耗されていくようなものにも皮革素材が使われることが多く、
リーズナブルな価格帯の皮革製品も多い。
その背景には、皮革製品を作るために命を奪われている動物が、
年間10億頭を超えるほどいるのだそう。
この状況に様々な思いを抱いた、ある女性が、
廃棄されるはずのパイナップルの葉から繊維を取り出して作った布があることを知り、
そこから皮革の代替品になるようなビーガンレザーの開発を行い、ピニャテックスが生まれたという。
革製品には革製品の良さがあり、それに伴って素晴らしい加工技術なども存在するため、
革製品がダメという単純な話ではなく、
何となく消耗品として使い捨てに近い状態で扱われていることに問題があるように思う。
それならば、捨てられるはずの葉っぱで丁寧に作られた、
最後は土に還るビーガンレザーは、様々な視点から見て魅力的な新素材のひとつだ。
受け取る側も、何となく手に取り、何となく消費していくのではなく、
考えて手に取り、消費する時代に入ってきた表れのようにも思う。
私は、まだ実際にビーガンレザーを使った商品を手に取ったことがなく、
その質感や手触り、耐久性といった詳細をお伝えできないのだけれど、
ピニャテックスやビーガンレザーという名を見聞きした際には、
今回のお話をチラリと思い出していただけましたら幸いです。
関連記事:
関連リンク:
画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/