待合室のソファーに腰掛けると、想像の域を遥かに超えた柔らかさで、体が丸ごとソファーに沈んでいくように感じられた。
2人分ほどの間隔を開けた位置に座っていた女性に、「私もさっき、びっくりしたんです。柔らかすぎて」と話しかけられた。
そして、驚きの表情を辺りに解き放ってしまっていた自分を、間接的に知ることとなった。
しばらくすると、その女性は席を立ち、入れ替わるようにして新しい方がその場に腰を下ろしたのだけれど、
無意識に、その方へと視線を向けていた自分にハッとし、先ほどの女性の気持ちが分かったような気がした。
やはり、見た目からは想像し難い柔らかさなのだろう。
その方の目も一瞬、パッと大きく見開いていたけれど、私は、声をかけることはせず、
近くに置いてあった冊子に手を伸ばした。
その冊子では、世界中にある一風変わった記念日が紹介されていた。
その中で目に留まったのは、韓国にある、毎月14日に定められている恋人に関する記念日。
韓国の恋人に関する記念日の多さは、時々、話題にされることがあるけれど、
改めて、順に記されているものを見ると、韓国の男性は大変そうだ、と思ったりもする。
1月14日は、ダイアリーデーと呼ばれており、恋人に手帳をプレゼントする日なのだそう。
手帳を贈り合い、2人の思い出を書き綴っていこうということなのだとか。
2月14日は、言わずもがなバレンタインデーで、女性が思いを寄せる男性へ愛を告げる日。
3月14日は、ホワイトデーなのだけれど、お返しという意味よりも、
男性が思いを寄せる女性へ愛を告げる日という意味合いが強いのだとか。
4月14日は、ブラックデーと呼ばれており、恋愛成就が叶わなかった者同士が、
黒色のメニューを食べながら痛みを分かち合う日などだそう。
私は韓国映画には疎いため、よくは知らないのだけれど、韓国映画好きの友人によると、
映画内で、「今年も〇〇(黒色をしたメニュー)を食べるよ」という台詞が登場することがあり、
恋人がいない、恋が成就していない、といった状況を表すために使われたりするのだそう。
5月14日は、イエローデーやローズデーと呼ばれており、
イエローデーは、ブラックデーまでに恋人ができなかった人が、黄色の服をきてカレーライスを食べる日なのだそう。
何だか罰ゲームのような決まりごとだけれども、
これを行わなければ恋人ができない、結婚できないといった根拠のないジンクスまで用意されている。
もうひとつのローズデーは、ちょうどバラが満開を迎える時期なので、
お相手との関係を更に発展させるために、バラを使った素敵なデートを提案しているのだそう。
6月14日は、愛を贈り合う、確かめ合うキスの日とされ、
7月14日はシルバーデーとよばれており、恋人に銀製品を贈る日だという。
8月14日は、グリーンデー、森林浴の日と呼ばれており、
恋人がいない人達は「GREEN」という名の焼酎を飲みながら、お互いを慰め合い、
既に恋人がいる人は森林浴デートをすすめる声があるのだとか。
所々、仕掛け先が想像できるような、業界事情が見え隠れしているようなものもあるけれど、
恋人に関する記念日は、まだ続く。
ここからは、もう少し簡単にご紹介すると、
9月14日は、フォトデー、ミュージックデーと呼ばれており、友人たちと音楽を楽しみながら、
恋人を紹介する日。
10月14日は、レッドデーと呼ばれ恋人とワインを楽しむ日。
11月14日は、オレンジデー、ムービーデーということで、恋人と一緒にオレンジジュース片手に映画を観る日。
12月14日は、ハグデー、マネーデーと呼ばれ、恋人とハグを交わして心温かく過ごす日であり、
彼が彼女のために、お金を使う日なのだそう。
ジンクスまで準備されているけれど、全く根拠がない決まりごとを、ここまで細かく設定するくらいだったら、
毎日を記念日のような気持ちで楽しく過ごす方が良いように思うのだけれども、
これも、先人たちが、ひな祭りだ、七夕だと言って記念日を定めてきたように、
日常をドラマティックに楽しむ術のひとつ、なのかもしれない。
記念日以外は何もしてはいけない、という決まりごとは無いのだから、
日頃から、感謝の気持ちを、愛を、大切な方へ伝えて下さいませ。
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