2人組の女の子たちから、可愛らしい会話が聞こえてきた。
ご飯茶碗と杓文字を手に炊飯器の前で、ご飯の炊き上がりを告げるメロディーを待ち構え、
炊き上がりと同時に、そのメロディーを遮るようにして炊飯器の蓋を押し開けると、
お米の芯が丸い形で透けて見える、この世のものとは思い難いご飯の姿が在ったのだそう。
その透けたご飯は、そのままでは食べることができないくらい、ガリッとした食感が残っていたらしいのだけれども、
機転を利かせて、炊き損じたご飯と水をお鍋に入れて煮てみたという。
しかし、今度は、お鍋から溢れかえるほどのお粥が出来上がり、現在、その消化作業にてんてこ舞いしている風だった。
要点だけを掻い摘んでみたけれど、この間、女の子たちは、
この世のものとは思い難いご飯や、お鍋から溢れるほどにまで変化したお粥の写メを見て、
それはそれは楽しそうに笑い転げていた。
この春から親元を離れ、ひとり暮らしを始めたことが透けて見えるようで、
私は、駅のホームでメールチェックの手を止めたまま、和ませてもらってた。
「お米を炊き損じるなんて、いつの頃の話かしら」などと澄ました顔で言ってみたいけれど、
私は未だに、年に1度か2度やってしまっている。
炊き損じたご飯を復活させる方法はいくつかあるけれど、
水分量を微妙に間違えて固くなったときに私が頼るのは日本酒。
固さにもよるのだけれど、お米2合ほどに対して大さじ1杯程度の日本酒を入れてよくかき混ぜ、
再度5~10分ほど蒸らせば、普段通りのふっくらご飯に蘇る。
炊き直しが必要なほど固いときには、炊飯器の中のご飯に数か所、窪みを作り、
そこに大さじ1~1.5杯程度の日本酒を入れ、炊き直す。
もちろん、日本酒の替わりにお水や料理酒を使っても良いのだけれど、
お米から作られる日本酒には、お米の旨味がぎゅーっと凝縮されていることもあって、
ご飯にお米本来の旨味が加えられ、炊き損じたとは思えない仕上がりとなる。
お酒の香りやアルコール成分はすぐに飛んでしまうため、
お酒が苦手な方が召し上がるご飯に使っても問題はない。
随分と前に、ある鮨屋の大将に教えていただいてからはずっと、日本酒頼りだ。
冒頭の女の子のように、日本酒でも復活させられないような、
“ウッカリ炊き損じ”を発動させてしまったときには、
一度で食べきることができるようにパエリアやリゾット、ライスピザなどにしている。
もちろん、それが炊き損じたご飯だとは分からないような仕上がりであり、
先に出来上がってしまっているメニューに合わせて、和風、洋風、中華風の味付けに変えもするのだけれど、
どうしてここでパエリアか!?どうしてここでライスピザか!?という思わぬ理由で、
あっさりと炊き損じたことがバレてしまうのが腑に落ちない、炊き損じ問題である。
キッチンアクシデントも楽しんで、美味しくまいりましょ。
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