外国暮らしをしている友人から近況を知らせるメールが届いた。
そこには、「虐待」という衝撃的なワードが含まれており、文字を追う目に力が入ったけれど、
メールを読み進めると、そのような出来事は彼女の周りで一切起きておらず、
生まれ育った環境や人種の違いによる知識不足が招いた誤解だったことが分かった。
その誤解が生じたのは今年のGW辺りの出来事だ。
友人の元に、友人の妹家族が遊びにくることになったため、
数年ぶりに会える喜びを現地の友人たちに話したという。
すると、「せっかく、日本からご家族が遊びにくるのだから、皆でおもてなしをさせてほしい」という申し出があり、
現地の友人家族たちが、温かい雰囲気のホームパーティーを開いてくれたのだそう。
当日は、友人の3歳になる姪も芝生が敷き詰められている庭を歩き回るなどして、とても楽しい時間を過ごしていたという。
しかし突然、現地の友人である1人から私の友人は別室へ呼び出され、
「あなたの妹は子どもに虐待をしている。早急に対処すべきだ。」と興奮気味に詰め寄られたという。
慌てる現地の友人を落ち着かせながら、そのような事は無いと言って理由を尋ねると、
友人の姪が着替えさせられているところを偶然目にしたのだけれど、お尻に、大きな青痣があったと言ったのだそう。
勘の鋭い方なら察しがつくと思うのだけれども、
日本人であれば誰もが知っている“蒙古斑”のことを虐待の痣だと勘違いしていたのだ。
それもそのはず。
蒙古斑は、日本人である私たちにとっては、良く知るもののひとつだけれど、
この蒙古斑はアジア人に多いもので、欧米人の赤ちゃんに出ることは少ないため、
大人でも存在を知らない方が多いのだ。
だから、蒙古斑のような青痣をみてしまうと驚き、虐待が起きていると思っても仕方ないのである。
蒙古斑が出る原因は、未だ解明されていないようだけれど、
メラニンを作り出すメラノサイトという細胞が、お尻や腰辺りで働くことが多いため、
この辺りに蒙古斑が出来やすいのではないかという説があるという。
子どもが、ある程度成長してしまうと消えてしまう蒙古斑は、
私たちからみると、赤ちゃんらしさや子どもらしさの象徴のようにも見えて、
愛らしくもあるのだけれど、欧米人から見ると、衝撃的な、とても不思議なものに映るのだ。
友人の妹家族をもてなすパーティーは、蒙古斑の話題で持ちきりだったらしく、
友人は人生で、こんなにも蒙古斑について語った日は他に無いと言っていた。
人見知りをすることもなく、遊び疲れて眠ってしまった友人の幼き姪は、
お昼寝中、「貴重な蒙古斑を見る機会はもう無いと思う」と口々に言う外国人の方々から、
お尻を覗かれまくっていたという。
出来れば、大きくなった彼女には秘密にしておいてあげて欲しい出来事である。
私は、以前「日本人には蒙古斑というものがあるらしいが柊希にもあるのか?」と尋ねられたことがあり、友人のように蒙古斑について語らされた1日がある。
その時は、説明することに一生懸命だったけれど、
今思えば、セクハラ認定してもいい?と突っ込んでも良かったのではないかと思ったりもする。
もちろん、相手は、純粋に蒙古斑という未知なるものへの理解を深めたいだけだったことが分かっていたのだけれど。
大人になるにつれて蒙古斑とのご縁も薄れていきますが、
機会がありましたら、今回のお話をちらりと思い出していただけましたら幸いです。
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