バラエティーショップの一角に、小学生向けのものだろうか、様々な自由研究キットが並べられていた。
どのパッケージも想像以上にカラフルで、キットそのもののデザイン性も高かったため、
足を止めて、いくつかのキットを手に取り眺めてみることにした。
中でも、私は挑戦したことはないのだけれど、自由研究の定番とも言える「アリの巣」の研究キットは種類も豊富だった。
しかし、目に留まったのはアリの巣キットではなく、その横に積まれていた、
生きているアリを捕獲するためのアリキャッチャーと呼ばれるアイテムだ。
なんでも、そのアイテムにアリが喜びそうなエサをセットしてアリの巣付近に置いておくと、
研究対象となる生きたアリを捕獲することができるのだそう。
手頃な価格設定から、確実に捕獲できるアイテムなのか、少しばかり気にはなったけれど、
Gホイホイのアリバージョンと言ったような印象を受けた。
素手で捕獲しないのねと思いつつ、
ズラリと並べられた自由研究のお膳立ての完成度に圧倒されつつ、その場をあとにした。
そう言えば、アリの中にはエサ集めをサボるアリが、ある一定数いるという。
アリの巣は地中に広がっており、私たちが地上で目にしているアリの何十倍、何百倍、
いや巣によっては何千倍といった数のアリたちが地下の巣で暮らしている。
そのアリたちの生活を支えるためには、それなりの食料調達が必要となるため、
働きアリたちは地上で一生懸命働いているというアリ社会の図式がある。
しかし、働きアリの仕事は、地上に出て食料を調達する以外にもあり、
女王アリや卵、卵かた孵った幼虫のお世話や、脆くなっている巣のメンテナンス、
更には巣の拡張と、とにかく忙しい日々なのだそう。
厳しい自然界のことだから、全ての働きアリたちが、さぞ、一心不乱に働いているのだろうと予測し、
地下の巣に居る働きアリの1匹、1匹を識別して、巣全体の観察を続けると、
どのような事態が起きても働かず、当てもなくプラプラと巣の中を歩き回ったり、
1日の大半を、寝るかカラダのお手入れをするかして過ごしているアリが2割ほどいるという現実が分かるという。
もちろん、その2割の中には、卵が孵化し、幼虫たちが一斉にエサを必要とするようなタイミングでは、
巣の中が異常な忙しさを察知するのか、
他のアリたちと同じように働きだすアリもいるそうなのだけれど、
余程の緊急事態が起きない限り働かないというマイペースなアリも存在しているという。
決して人間社会が厳しくないという訳ではないのだけれど、
この話を聞いたとき、厳しい自然界の中にも、人間社会のような組織が存在しているのかとった記憶がある。
それからと言うもの、地上でアリを見かける度に、このアリは間違いなく働きアリだと思うのである。
アリたちの活動も活発になるこの時季、地上でアリを見かけた際には、
アリ社会のお話をチラリと思い出していただけましたら幸いです。
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