お土産でいただいた七味が味わい深かったものだから、久しぶりに七味熱が上昇中である。
一回で大量に使うものではないから仕方ないのだけれど、七味は、日を追うごとに香りや風味が落ちるため、
購入する際には、内容量が少ないものを選ぶようにしている。
しかし、少ないものを選んだ時に限って、予想以上に早く使い切ってしまうのはどうしてだろうか。
そのようなことを思いながら、七味が並ぶ棚に視線を定めた。
一度くらいは、自分好みの七味を作ってもらおうと目論んでいるのだけれど、
今は、その日のために、様々な七味をお試ししている最中である。
いつだっただろうか。
仕事をご一緒した方に、うどんが美味しいと評判のお店へ連れていっていただいたことがあった。
暖簾をくぐってすぐに出迎えてくれたお出汁の良い香りに、期待度がグンと跳ね上がった。
そのお出汁を使った一品料理も、どれも美味しく、丁寧な仕事ぶりが伝わってくるようだった。
少し離れた席には、幼さが残る面々が座っていたのだけれど、
その中の女性が、カバンの中からマイ七味を取り出し、うどんの上に豪快に振りかけだした。
食事は、その人が食べたいように食べればいいのだけれど、
七味を振りかける手が、いつまでも止まる気配がなかったものだから、
周りのテーブルの人たちもちらちらと、女性の手が止まる瞬間を伺っていた。
私の席から、うどんの姿は見えなかったけれど、別物に仕上がっていたのではないかと想像した。
その様子を見ていた知人が、様々な意味を込めたであろう「味覚は人それぞれだから」に、私も様々な意味を込めて「そうですね」と返した。
そして知人は、「七味唐辛子の中には大麻の原料が入っているの、知ってる?」と続けた。
日本食の薬味として長年、親しまれている七味唐辛子は、赤唐辛子、黒ゴマ、山椒、麻の実(正確には麻の種)、芥子(けし)の実、陳皮、青海苔、7種類の材料から作られている。
この中の、麻の実は古から日本で親しまれてきた大切な食物で、
タンパク質と脂質が豊富な栄養価が高い食材だ。
人も食べるし、動物たちのエサとしても販売されている。
私たちが、これを食べたからと言って、体に大麻による害が出るわけではないのだけれど、
この麻の実が大麻の種であることに着目し、麻の実から大麻を育てて逮捕された方がいるのだそう。
更に、芥子(けし)の実。
こちらも七味で口にしただけでは、私たちの体には何の害もないのだけれど、
芥子(けし)の実は、麻薬であるアヘンの原料になるという。
知人は、七味をドバドバとかけたり、食べたりしたからと言って、麻薬の影響は一切ないと分かってはいるのだけれど、
料理が盛られた器の表面を、七味で真っ赤に染めてしまうくらい、ドバドバとかけている人を見かけると、この話を思い出すのだと笑っていた。
そのようなことを思い出しながら、七味を手に取りレジへ並んだ。
お皿の上でも人生の上でも、スパイスは、ほどよくピリッと効かせたいものだ。
【補足】この話に触れるにあたり、麻の実のことを調べてみたのですが、麻の実から大麻を育てることは、ほぼ不可能なのだそう。これは、私たちが口にしたり、手にできる麻の実は加熱処理が施されており、育てようにも発芽しないことが理由。
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