珍しく、電車内が空いていた。
空いた通路には窓から差し込む日差しが筋になって注いでおり、
景色の切り取り方次第では、情緒ある1枚が撮れるのではないだろうかと思った。
ひんやりとした車内と熱々であろう日差しのギャップもまた、夏ならではのシチュエーションだ。
しばらくして電車は駅のホームに滑るようにして入り、止まった。
ドアが開くと、一気にもわっとした熱気が車内に流れ込んできた。
出入口近くに座っていた私は、思わず「暑い……」と零しそうになるのを抑えつつ、電車が走り出すのを待った。
発車して、しばらくすると、高校生らしき女の子が通路を隔てた斜向かいに座った。
鞄の中を整えたくてたまらなかったのかもしれない。
座席に腰を下ろすなり、鞄の中身をひとつずつ取り出して、空いている隣のスペースに置き始めた。
そして、不意に出てきたのは、持ち歩くには大きすぎるビッグサイズのマヨネーズだった。
マヨラーは死語だろうと思っていたけれど、その存在は未だ健在のようだ。
このマヨネーズ、思いの外、敬遠する方が多いように思う。
食の好みは人それぞれだから苦手だという方がいらしても不思議ではないのだけれど、
敬遠する理由が「苦手だ」ではなく、「高カロリーだから」「コレステロールが気になる」と言う方が多いのだ。
マヨネーズは卵黄、お酢、オイルから作る調味料だけれど、特に、このオイルを気にする方が多いと聞く。
しかし、野菜は、少量のオイルと一緒に食べることで、
野菜の栄養が効率よく体に吸収される性質がある。
これは、野菜に含まれているビタミンEやベータカロテン、ビタミンKといった栄養は、
オイルに溶け出すことで体内に吸収されていく性質があるからだ。
これだけ健康志向が定着していても、
ドレッシングの多くにオイルが使われているところをみると、
お味の面だけではなく、栄養価の面も考慮した材料で作られているように思う。
そして、このオイルの働きは、マヨネーズに加工されると、更にアップするという。
マヨネーズに含まれているオイルは、加工によって乳化するのだけれど、
このときに、オイルの表面積が増し、増した分、ビタミンの吸収がアップするという仕組みだ。
どのような食材でも、調味料でも、必要以上に摂取すれば毒になるけれど、
程よく、上手にお付き合いをすれば、毒を味方に変えることもできるように思う。
様々な状況があり、摂取することを真剣に控えなくてはいけない状況に身を置かれている方もいらっしゃるため、
「全員が」ということにはならないけれど、
目の前にあるものを「美味しいね」と言いながら、「美味しい」と感じながらいただくことも、
暮らしの中にある小さな幸せのひとつではないだろうか。
そのようなことを思いながら、電車の振動で上下に揺れるビッグサイズのマヨネーズを眺めた日。
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