巣蜜が詰められた箱を空ける瞬間は、少しばかり気分が高揚する。
巣蜜(すみつ)とは、ミツバチが巣に貯えた状態のハチミツのことでコムハニーとも呼ばれている。
通常のハチミツは、人の手によって、この巣から蜜を取り出したものなのだけれど、
本来は、巣の中に閉じ込められたまま巣蜜の状態でいただくハチミツの鮮度が一番高く、
栄養価も味も非常に良いと言われている。
私は、ナイフで一粒チョコレートほどの大きさにカットしたものを、そのまま味わうのがお気に入りだ。
初めて巣蜜を口にしたときには、巣の素材である蜜ロウがガムのようになって口の中に残ることに違和感を覚えたけれど、
この蜜ロウにはプロポリスが含まれており、噛めば噛むほど体内に吸収されていくと聞き、
今では蜜ロウもありがたくいただいている。
巣蜜を口にするとき、普段は目にする機会がない巣を間近で見ることができるだけなのだけれども、
機械でも使って作ったのではないだろうかと思ってしまうくらい、
美しい六角形が、びっしりと敷き詰められている。
この、六角形を敷き詰めたような構造は、自然界の中に多々存在しており、
ミツバチの巣(Honey Comb)という意味のハニカム構造と言われている。
この構造を使うと、しなやかな柔軟性があり、非常に丈夫で、とても軽いという。
そして、正三角形や正方形を敷き詰めた構造では、このようにはならないのだそう。
ミツバチは、これを知ってか知らでか、できるだけ少ない蜜ロウを使い、効率よく最強の巣を作っていることになる。
彼らの巣の構造は、建造物という視点から見ても人が真似るほどの精密さなので、
私たちの身の回りにある、様々なものを作るための材料にも、
この自然界に存在する最強のハニカム構造が、当たり前のように使われるようになっている。
そのようなことを思い出して自然界のものを見てみると、この六角形を使ったものが多いことに気付かされる。
ハチ以外にもアリやクモの巣などもそうなのだけれど、
先日、このようなところにも六角形が!とハッとしたのはピーマンのヘタである。
知ってか知らでかと言うよりは、もうこれ、自然界の常識なのだろう。
人には人ならではの良さや強みのような特性などがあるように思うけれど、
自然界側からみれば、人が思っているほど、人の強みは強みではないのかもしれない。
敷き詰められた六角形を目にした際には、ミツバチの巣(Honey Comb)をちらりと思い出していただけましたら幸いです。
それにしても、小さな六角形の中に詰められたハチミツの美しくて美味しいこと。
自然とミツバチと職人の技から生まれる巣蜜に頬が緩む夜である。
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