海外に居る友人、知人へ送るグリーティングカードをテーブルの上に広げた。
送ろうと思ったときに探していたのでは、思うようなものに出会えないことが多いため、
グリーティングカードは見つけたときに購入するようにしている。
その、カードコレクションをずらりと広げたのだけれど、
今回は古の日本が好きでたまらないという友人のために、花札の絵柄を切り絵でアレンジしたものを選ぶことにした。
細やかな技が光る切り絵によって表現された世界の魅力もさることながら、
受け取った側は、その繊細な技術にも心奪われるようで、非常に良いリアクションが返ってくる。
そのことに気を良くしている私は、送る側として、繊細な切り絵タイプのグリーティングカードに頼ることが多い。
彼らが、美術品のようだと喜んでくれるグリーティングカードが、雑貨店のカードラックに大量に並べられていると知ったら、
日本の物づくりに対して抱く印象は、また少し変わるのかもしれない。
そう思いながら、何枚か所持していた花札の絵柄から選んだのは8月の花札である「芒(ススキ)に月」。
もう既に9月なのだけれど、8月の花札と言っても旧暦の8月のことで、今で言えば9月のこと。
そして、ススキも今が見頃で、ちょうど良いではないか、と思った。
更にこの絵柄は、外国人の方の評判も上々なのだ。
少々手間なのは、この季節だからこその絵柄なのだということを、できるだけ分かり易く説明しなくてはいけないことだ。
私のプライベート事情はさておき、
以前は、「芒(ススキ)に月」の絵柄に軽く触れつつ、ススキのお話をさせていただいたようなので、
今回は、絵柄の別名のお話を少しだけ。
この絵柄、「芒(ススキ)に月」という名を持ちながら、「坊主(ボウズ)」の名でも知られている。
※上記画像の中央にある、赤地に白い月が浮かんでいるもの。
そう聞くと、空に浮かんだ月が、坊主頭に見えるからだろうかなどと推測してしまうのだけれども、
実は、「芒(ススキ)に月」の絵柄を印刷するために、この絵柄を刻した木板を使った際、
木版の目に黒い墨が詰まって固まってしまい、繊細なススキが消え、
黒い山の上に月が浮かんでいる絵柄に仕上がってしまい、それが商品として世に広まってしまったのだそう。
そして、この黒い山を見た人たちの中で、これは坊主頭の様ではないかという話なり、
この絵柄は坊主(ぼうず)と呼ばれるようになったのだとか。
私は、花札の知識が全くないため、遊ぶことはできないのだけれど、
この名前の裏話を知ってからは、「芒(ススキ)に月」の札を目にすると、
真黒に染められたススキが野球少年の坊主頭に見えて仕方がない。
それまでは、真黒に染められていても、黄金の光を放ちながらふわふわと揺れるススキが、そこに見えていたはずなのに。
あなたの目の前に現れる「芒に月」の札の中に見える景色は、ススキでしょうか、それとも……。
「芒に月」の札を目にする機会がありましたら、今回のお話をちらりと思い出していただけましたら幸いです。
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