重陽の節句のために生けていた菊やリンドウも、何度目かの活け替えを経て、そろそろ終わりに近づいてきている。
リンドウの深い青、ここではロイヤルブルーと言った方がイメージしやすいだろうか。
このロイヤルブルーに、小さな向日葵のようにも見えるスプレー菊やピンポンマムの黄色を合わせるのが、この時季の私の定番なのだけれど、
この色の組み合わせを眺めていると、心身が、深まりゆく秋へとリンクしていくように思う。
しかし、日中の日差しは、まだまだ強く、秋の装いを全身で楽しむことができるのは、もう少しだけ先になりそうである。
そのようなことを思いながら始まったその日、私はいくつかの、似たような記事に目が留まることとなった。
その全てが人工知能(以下、AI)を使ったサービスや製品に関するものだったのだけれども、
その中には、これから商品化される予定の、
体調や好みに合わせてお風呂から上がるタイミングを知らせてくれたり、高齢者の入浴中の事故防止に役立つ、お風呂に浮かべて使うロボットや、AIが搭載された機械などが紹介されていた。
既に一部の書店で使われている、AIが搭載されたそれは、
お客が機械の前に立つと、機械に搭載してあるカメラが、年齢や性別、表情を読み取り、
その人に合った本を選んでくれるというものなのだそう。
以前、AIに行き先を決めてもらったり、紹介してもらうなどして、
自分では普段選ばないような場所や経験を通して新しいことを楽しむ、といったサービスの話題に触れたことがあるけれど、それと似たような用途のように思う。
そして、既に一部の書店で使われているこのAIは、“AI書店員”という位置づけなのだそう。
今はまだ、物珍しさが先行しているようにも思うけれど、
本を、このAI書店員に紹介してもらった人の2割ほどは、紹介された本を購入しているということで、売り上げにも貢献しているという。
休日のちょっとした過ごし方の提案や、場所の選択に利用されているAIと同じように、
このAI書店員も、自分では普段選ばないような1冊を紹介してくれることから、
利用者は、読書の幅が広がるという点に魅力を感じる人が多いようだ。
私はまだ、この機械にお目にかかったことが無く、
どのような本を私に紹介してくれるのか非常に興味はあるのだけれど、
ここでもまた、易々と自分の楽しみを手放すまいとも思ってしまうのは、
実は、AIに対する自覚なき嫉妬なのではないだろうか、とこの頃思ったりもして。
自分の感覚や感性を無くさずに、共存したいものである。
世の中をちらり、ちらりと眺めつつ、そのようなことを思った日。
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