デスクの隅で、すっかり冷めてしまっているホットレモンを飲み干した。
溶けきれずに底に溜まっていたレモン風味のハチミツの甘さが、口の中を占領した。
口の中をサッパリさせたくて、2杯目のホットレモンを作りにキッチンへ向かうと、
シンクに向かうような状態で脱ぎ揃えられているバブーシュが目に入った。
家の中では裸足で過ごすことが多い私は、至る所にバブーシュを脱ぎ捨てる癖があるのだけれど、
前回は、ここで脱いだのか。でもどうして、ここで。
そのような思いで、それを横目で捉えたけれど、納得できるような答えは見つからず、見て見ぬふりをして2杯目を作った。
ふと、昨夜、知人から受け取ったメッセージを思い出した。
役所へ行き、いくつかの代理手続きを行っていたそうなのだけれども、
続柄に関することを質問したときに、「つづきがら(続柄)」と発すると、役所の方に「ぞくがら(続柄)は~」と言い替えられたと言うのだ。
知人は、「別にどちらでも構わないけれど」と前置きをした上で、
正しくは「つづきがら」だと思うけれど、このようなシチュエーションでは正解ではなく、大多数の意見を使った方がいいのだろうか?
正解とは何のことだろう?柊希なら、このようなときには、どちらを使う?といった内容のメッセージだった。
このような文章にしてしまうと、真面目なやり取りのように聞こえてしまうけれど、
やり取りそのものは、世間話のひとつという程度の軽やかなものだった。
「続柄」という単語を声に出す場面は、そう多くはないため間違いに気が付きにくい単語なのだけれど、
正しくは「つづきがら」と読み、「ぞくがら」と読むのは誤りである。
私自身も、これを「ぞくがら」と読んでいた時期があるのだけれど、
指摘されたことをきっかけに、現在は、頭の中で「つづきがら」と読んでいる。
一説によると、正しい表記は「続き柄」なのだけれど、
役所の書類などに「続柄」と表記されたことがきっかけとなり、
「ぞくがら」という俗称のようなものが浸透してしまったのではないか。という見方もあるという。
現在は、「続柄」は「ぞくがら」と、「続き柄」と記されている際には「つづきがら」と呼び分けることもあるようなのだけれど、
それでも、もとを辿れば、正しくは「つづきがら」である。
私は、今回の知人のように「続柄」という言葉を声に出して何を尋ねたり、説明したりといった機会に遭遇していないけれど、
お互いに違和感を覚えないように、「つづきがら」と言った後に、
さり気無く「ぞくがら」という読み方も付け加えるという、少々ズルい手を使うだろう、と思う。
「1+1=2」というような答えは、分かり易くて、共有もしやすいのだけれど、一筋縄ではいかぬ正解も存在する。
正しさの基準、そのようなことを思いながら、温かいホットレモンを口に運んだ日。
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