初めて耳にしたときには大げさにも感じられた、「自分の命を守るための水分補給を、行動を。」というフレーズも、すっかり過去のものになった。
「本当に秋はやってくるのだろうか」
そう本気で感じていたことも、いつの間にか過去の出来事である。
そして、ちらちらと見え始めた冬を、視界の端で捉えながら過ごしているのだけれど、
終わりが見えないように感じられる時間もモノゴトも、こうして、いつかは終わり、次のステージへと移り変わっていくのだろう。
そのような事を思いながら、数年前にいただいた螺鈿細工が施されたお箸を洗った。
自分のために、ちょっと良いお箸を買って使うことは、簡単にできることの一つのように思うけれど、
だからこそ、なかなか手を出さないことのようにも思う。
私も自分のために良いお箸を買ったという記憶は少なく、また、そうした経験があったとしても、
それは単なる気まぐれで、「常にそうしている」と言えるほどの域には達していない。
そのような中、プレゼントしていただいた螺鈿細工のお箸を使うようになったのだけれども、
お箸の程よい重みと、口当たりの良さ、使いやすさは、丁寧に作られたお箸ならではのものだと実感中である。
そう言えば、日本人は手先が器用だと言われているけれど、これは、お箸を使う食文化によるものだという見解があるという。
更に、お箸を正しく使うことができると、指や関節をバランスよく使うことになるのと同時に、大脳にも適度な刺激が伝わるため、
脳の働きを育てたり、活性化させたり、痴呆症を予防したりと健康にも繋がると言う。
お箸以外にもスプーンやフォークといった便利な道具を使う機会が増えている現代人は、
お箸を使えないわけではないけれど、正しく使うことができるのは全体の1/3以下だという調査結果もあるのだとか。
これは、お箸マナーの話ではなく、単純に、正しく持ち正しく動かしながら食事をすることができるか、という視点の話である。
そう聞いて、自分自身のお箸の扱いを観察してみたのだけれど、
確かに、危うげな瞬間が無きにしも非ずという状態で、誤魔化す術を知っている指捌きのように見えた。
お箸の持ち方なんて、見るからに変でないのならば良いのでは?という考え方もあるけれど、
私には、男性でも女性でも、お箸の扱いが美しい方の食事姿は、えも言われぬ色香を纏っているように見えるのだ。
もちろん、美味しく、楽しく食事をすることが一番なのだけれど、
箸使いで見せる色香はさりげなく纏っておきたいものである。
美味しいものを味わう機会が増える時季でございます。
この機会に、ご自分のお箸使いをセルフチェックしてみるのはいかがでしょうか。
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