近所にある鮮魚店の店頭の隅には、魚にまつわる話が印刷されたショップカードのようなものが置いてある。
鮮魚店には珍しいショップカードということもあり、いつだったか1枚いただいて帰った。
帰り道、それを取り出して眺めると鮨屋の湯呑で出てきてもおかしくないような、魚偏の漢字がフリガナ付きで印字してあった。
それから随分と日が経ち、再び鮮魚店を利用する機会があり、その時に入手したカードには魚の名が入ったことわざが、可愛いイラストと共に印字してあった。
このようなときに目にしたものは、意外と記憶に残っていることが多いため、ザッと目を通すのだけれども、先日はいい意味で期待を裏切られたのだ。
1年以上ぶりに、その鮮魚店を利用すると、以前と変わらず「御自由にお持ち帰り下さい」の文章と共にショップカードが置いてあった。
私は、1番上の1枚を引き抜くようにして取って持ち帰り、自宅のリビングで満を持してカードの裏面に視線を落とした。
そこには「鯖を読む」の語源は?と印字してあったのだけれども、
「今日は自分で調べてみてね」と、キュートな魚のイラストと共にあった。
久しぶりに手に取ったそれに何が書いてあるのか、ほんの少しワクワクして持ち帰ったというのに、地味にガッカリである。
しかし、この「鯖を読む」ということわざの語源は諸説あるため、
ショップカードの裏にひとつだけ書くことも、全てを書き連ねることもできず、
今回は「ご自分で」という運びになったではないかと、勝手に推測し納得した。
実年齢や数などを少なく伝えたり、多く伝えるなど数を誤魔化す際に使う言葉だけれど、
どうして「鯖」なのか、どうして「読む」なのか。
鯖は昔から傷みやすい魚として知られており、魚市場で働く人たちは、鯖の扱いには神経を使っていたという。
出来るだけ早くお客さんに手渡すため、数えるときは早口で。というのが魚市場での暗黙のルールのようになっていたのだとか。
しかし、急いて数えたことによって数え間違いが起き、数が合わないことがあったそうで、このことが「鯖を読む」の語源では?という説が、よく耳にする説である。
この時に、鯖を「数える」ではなく「読む」という言葉を使っているのは、
「読む」という言葉には、もともと数を数えるという意味が含まれているため、このことわざ内では「数える」という意味で「読む」が使われている。
私は、この有力説しか記憶に留めていないけれど、語源だと言われている説の多くは魚市場から生まれたものだったように思う。
ここからは、語源とは無関係の、ちょっとしたお喋りタイムでございます。
鯖の話題には、「傷みやすい」「足が早い」などのキーワードがセットで登場することが多いのですが、
鯖は傷みやすいだけでなく、蕁麻疹や皮膚の腫れといったアレルギー症状を引き起こすヒスタミンが増えることがあるとも言われております。
しかも、このアレルギー症状は、普段からアレルギー体質である、無いに関わらず引き起こされる上に、
一度増えたヒスタミンは、加熱調理をしても、その量を減らすことはできないと言います。
皆さん、鯖を購入した日は、寄り道厳禁でございます。
鯖を召し上がる機会がありましたら、今回のお話の何かしらをチラリと思い出していただけましたら幸いです。
本日も、柊希にお付き合い下さった皆さん、ありがとうございます。
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