冬を感じる瞬間が少しずつ増えてきた。
お鍋から立ち上る湯気や、体を湯船に静めたときに感じられる、じんわりと体中に広がる温かさ。
頬を刺すような冷たさや、見上げた空の白っぽさに、冬を前に最後の力を振り絞るようにして色を解き放つ植物。
ストールに顔をうずめた時の、うふふっと口元が緩むような優しい温かみや、
口に含んだ一粒のチョコレートを、甘ったるいではなく美味しいと感じる瞬間も。
数え上げたらキリがないくらい冬の気配である。
先日は室内ガウンを新調したのだけれど、リラックスタイムの心地よさが増した。
冬の楽しみ方は多々あるけれど、気が付いた冬の気配を数え上げるのも悪くないように思う。
頭の片隅で、そのようなことを思いながら自分のランチを作るためにキッチンに立った。
冷蔵庫の中を覗き込み、キノコと大好きな九条ネギを取り出しながら、あっさりとした和風パスタかしらと手を動かし始めた。
パスタを取り出し鍋に投入しようとした時だった。
手元が滑り、キッチンの床にパスタがバラバラッと散らばった。
散らばったそれを折れないように拾い上げながら、久しぶりに“スパゲッティの木”の話を思い出した。
“スパゲッティの木”の話に触れるタイミングとしては、少々時季外れではあるのですが、
このまま流れに委ねて、今回は“スパゲッティの木”のお話でも。
ご興味ありましたら、お好きなお飲み物片手にお付き合い下さいませ。
これは、世界中で未だに傑作だと言われているエイプリルフールジョークのひとつです。
エイプリルフール当日は、様々な企業や、個人、各国のテレビや新聞などが、
フェイクニュースなどを発表して人々を楽しませていますが、
この“スパゲッティの木”の話は、イギリスの公共放送局BBCが、局の看板番組のひとつとしている時事ドキュメンタリー番組内で、
「今年は暖冬でスパゲッティを食べる害虫が減ったため、スイスの農家ではスパゲッティが大豊作」という情報を放送したのです。
しかも、情報と共に公開された映像に収められていたのは、農家の人々が木にぶら下がっているスパゲッティを収穫している姿。
まだ、スパゲッティが日常的に食べられる状況ではなかったイギリスでは、
スパゲッティがどのようにして作られている食材なのか知る人が少なかったのか、
多くの人がこのフェイクニュースを信じたと言います。
そして、番組内では、このニュースがエイプリルフールのジョークだと伝えたにも関わらず、
スパゲッティの木の育て方を知りたいという問い合わせが殺到したそうなのですが、
BBCでは、このような問い合わせが来ることも想定済みだったといい、
「スパゲッティの木を育てるには、トマトソースの缶にスパゲッティの小枝を差し木し、上手く育つように祈って」という回答を準備していたという話まで飛び出したのだとか。
日本で言うならば、NHKがフェイクニュースを大真面目に扱ったといったイメージで、
イギリスでは、エイプリルフールが近づくと未だに触れられる話題のひとつです。
正直、聞き飽きているレベルに近いようにも感じるのですが、
それでも、やはり、これがエイプリルフールジョークでは傑作だと思うと言う人が多いのです。
パスタを召し上がる機会がありましたら、“スパゲッティの木”の話題を思い出していただけましたら幸いです。
そして、当時のBBCがスイスと協力して制作した本気映像にご興味ありましたら、下記からお楽しみください。
音が出ますので、閲覧環境にご注意ください。
画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/