先日、口頭でメールアドレスを伝える機会があった。
ユーザー名とホスト名を繋ぐ記号を「@(アットマーク)」と呼び伝えながら、これをエスカルゴと呼ぶ知人がいたことを思い出した。
4、5年ほど前、世界中に散らばってしまっている知人たちとやり取りをしていたときのことだ。
会話の中身は既に忘れてしまったのだけれど、その中の一人がアットマークのことをエスカルゴと言った。
そのときは、何の前触れもなく飛び出した「エスカルゴ」という言葉が、アットマークの事だとは誰も気が付かず、エスカルゴって何かの隠語?ネット用語?と質問が集中した。
知人は、共通認識ではなかったことに驚いた様子でアットサインのこと、アットシンボルのことだと言った。
そこで、この記号「@」は、国によって通称が異なっていることに各々が気付くこととなった。
海外では「@」をエスカルゴと呼ぶ他にもサイクロン、尻尾などと呼ぶこともあるという。
私は、そう言われれば、カタツムリや台風、尻尾を表しているように見えないこともないか、などと思いながら彼らの話を聞いていた。
すると突然、日本では何と呼ばれているのだと問われたものだからシンプルに「アットマーク」と答えたのだけれど、
そうではなく、日本人にはこれが何に見えるのか?と踏み込まれた。
頭の中をフル回転させながら、何とかギリギリ会話の流れを追っているような状態だった私は、いつもの如く、お願いだから説明が難しくなるようなことは尋ねないでくれと思った。
そして、返答を焦った私は、後に訪れるであろう説明の難易度にまで気が回らず、「NA・RU・TO」と答えてみた。
当然、「NA・RU・TOとは何ぞや?」と返ってくる。
もう、何をどこからどのように説明したのかまでは覚えていないのだけれど、
あの白地にピンクのラインがちょっぴり可愛い、渦巻模様のかまぼこ、鳴門巻きのことを説明し、妙な汗をかいた記憶が薄っすらと残っている。
その後、何の盛り上がりもないまま、話題が他のものへと変わったところを思い返すと、
私の説明は、彼らの好奇心を刺激することができなかっただけでなく、「なると」の説明も、グダグダだったのだろうと思う。
そして、このとき、世界共通語だと思っていたアットマークという呼び名も和製英語だと知ったことをきっかけに、
どうしてメールアドレスに「@(アットマーク)」が使われるようになったのだろうかと思った。
お名前は記憶からすっかり抜け落ちてしまっているけれど、
今や持っていることが当たり前と言えるほどのレベルにまで達しているEメールにも、これを初めて世に送り出した人がいる。
このEメールの創始者が、名前に使われる確率が非常に低くアルファベットと混同しない記号だからという理由で、
ユーザー名とホスト名を区切るための記号として使ったことから、世界中で使われるようになったのだそうだ。
他にも、場所や位置を指すさいに使われる「at(アット)」と「@(アット)」の発音が同じであることから、
ユーザーが所属している場所だとも言えるホスト先を示す際にも好都合といった理由も挙げられている。
エスカルゴ、サイクロン、尻尾、なると以外にも、世界中で様々な愛称を持っている「@」。
愛称の多さは、それだけ世の中に浸透し、なくてはならない存在になったということでもあるのだろうか。
電話口で、そのようなことを思った日。
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