幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

“開くは左”の呪文で一件落着。

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悪気は全くないのに、意地悪なことをしてしまったような出来事に仕上がってしまうことが稀にある。

その日はいくつかの用事を済ませた後、ビルを出ようとエレベーターに乗り込んだ。

一気に一階まで運んでもらおうと目論んでいたのだけれど、私の当てが外れ、エレベーターは各階に停車しながら1階を目指していた。

幾度目かの停車フロアでは、乗り込んでくるはずだった人が行き先を変えたのか、他のエレベーターに乗ったのか、開いた扉の前に人の姿はなく、エレベーター内に妙な空気が広がった。

なかなか閉じない扉に対して各々が何を思ったのかは分からないけれど、エレベーターの各階ボタン前に立っていた方が場の空気を読んだのだろう。

「閉じる」ボタンを押した。

カチャッと音がした後、開きっぱなしだった扉は静かに閉じられ始めた。

すると、扉の向こう側フロアの方から「待って下さい!乗ります!3名乗ります!」と聞こえた。

急ぐ予定がなかった私は、よく通る声だなと思っていると、再びカチャカチャッとボタンを連打する音がしたと同時に、扉が閉じられた。

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その直後だ、各階ボタンの前に立っていた方が、「あ、間違えて閉じるボタンを押してしまって」と慌てた様子で隣の方に言っていた。

きっと、慌てて開けるボタンではなく閉じるボタンを押してしまったのだろうし、誰もそのことに対して咎めはしない。

よく通る声で3名乗ると意思表示した方も、察してくれることだろうと思う。

ただ、ボタンを押し間違えて扉を閉じてしまった方は、自分の背後にいる人たちに対してばつが悪い思いだったのだろうと思う。

このような時、誰かが気の利いたひと言を言えたなら、その場は和むのだろうけれど、エレベーター内の一番奥に立っていた私には、

その場所から、大きな声で気の利いたひとことを発する器量はなく、心の中で「こういうこと、誰にでもありますよ、あります、あります」と呟くのが精一杯であった。

すると、その方の近くに立っていらしたご年配の方が仰った。

「ボタン迷いますよね。私はね、“開くは左”って覚えてるんですよ。大体、これで合ってますから」と言って3階辺りで降りていった。

きっと、あのエレベーターに乗っていた方のほとんどが、降りる際に開閉ボタンの位置を確認して降りたに違いない。

もちろん、私もその中の一人である。

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その後、調べてみたのだけれど、エレベーターの開閉ボタンの並び位置に決まりは無いけれど、並び位置は大体、同じなのだとか。

私も、開けようとして閉じるボタンを押したことがある。

だから、ボタンを押す際には出来るだけしっかりと確認するのだけれど、記号表記にしても漢字表記にしても、見難いボタンだと感じていたところだった。

その日から、乗ったエレベーターの開閉ボタンをチラリと確認しているのだけれど、今のところ全て「開くは左」である。

そして、エレベーターの開閉ボタンを押す際に感じる、地味な緊張から解き放たれたように思う。

もし、エレベーターの開閉ボタンを何となく見難いと感じたことがある方は、

「開くは左(「ひ」らくは「ひ」だり)」を思い出してみてくださいませ。

ちょっとした解放感をかんじられるのではないでしょうか。

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