作業のお供にとリビングで流していた音楽を止めてテレビを点けた。
画面に映し出されたのはご当地の美味しいものを紹介するグルメ番組だった。
その番組内で紹介される品々を聞き広いながら手を動かしていたのだけれど、「濃厚」、「もちもち」といったフレーズが度々登場した。
私は作業に使っていない耳のみで、その番組を聞いている状態だったため、食レポから品々を想像するしかなかったのだけれど、
「濃厚」「もちもち」といった表現はいつの間にか、とても万能な表現の座を得ているような印象を受けた。
かく言う私も、つい多用してしまって反省することがある。
安易に使わないようにしていると言うと少々語弊があるのだけれど、
言葉を扱っている身としてはできるだけ、この万能な言葉に頼りすぎずに、様々な表現を楽しもうと胸に刻んでいたりもするのである。
いつだったか、とても美味しいお餅を口にした。
その時の私の脳内では「このモチモチ感はクセになりそうだ」と思ったのだけれど、次の瞬間に「餅にモチモチって」と突っ込み人前で発しなくて良かったと思ったことがあった。
このときの私のように、笑いを取ろうと思ったわけではないのに、ひょっとして?と思われる疑いを持った、
笑いにもならない絶妙なラインの言葉を発してしまいそうなときに重宝する表現は、大和言葉ではないだろうかと思うことがある。
今回の場合であれば、足が強い、足が弱いといった表現を使ってみるとよい。
実は、この「足が強い」という表現も「もちもち」という表現に負けず劣らず万能なのだ。
ぷりっとした弾力を持った食感のものや粘り気が強いものや、そのような食感のものを表現する際の言葉に適している。
一方、この逆の状態には足が弱いと表現することができる。
「もちもち」の逆を表現する際に適した言葉はなかなか見つからないけれど、「足」を使えばすぐである。
もちろんこれは、「もちもち」という表現がダメだと言っているのではなく、
表現の引き出しが多ければ、美味しさを様々な角度から伝えたり、共有できたり、興味を持ってもらえたりするように思うのだ。
言葉の引き出しの片隅に、古から使われ続けている大和言葉なんぞ忍ばせておいてみてはいかがでしょうか。
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