外の風が気持ち良い季節になった。
その日は、テラス席で飲み物を楽しみつつ買ったばかりの本を広げていた。
本当は家でじっくりと読みたいのだけれど、思考や体が凝り固まりそうになると、敢えて雑音が入り乱れる空間で本を広げることがある。
私はあまり器用ではないため、結局自宅に帰ってから読み直すことになるのだけれど、予想外のことが起きる環境も程度の差こそあれ、リフレッシュになるように思う。
本を読んだり、行き交う人を眺めたり、空に浮かぶ雲が流れる様子を眺めたりと、一杯の紅茶が底をつくまでの時間を気ままに過ごしていると、ご婦人たちが楽しそうに笑いながら隣の席についた。
そして、さっき美味しいご飯を食べたばかりなのに、甘いものは別腹だと言って盛り上がっていた。
女性の別腹、あれは何なのだろうと思ったことがある。
あの別腹は、いつから、何歳から存在しているのだろうかとも。
男性の前でスイーツは別腹などと言うと、「さっき食べたばかりなのに……」というニュアンスを含んだリアクションをもらうことがあるけれど、
これは男性でいうところの“飲んだ後のラーメン”といったところではないだろうか、と思う。
いつだったか、このような話をしていたとき、別腹は本当にあるという話を教えていただいたことがある。
今回は、そのようなお話をと思っております。
ご興味ありましたら柊希に少しだけお付き合いくださいませ。
私たちが満腹を感じるのは、食べ物が胃の中を占領して胃が張ってきたときもそうなのだけれど、
その多くは、食事による血糖値の上昇を脳が察知して満腹サインを出したときであり、私たちの食欲をコントロールしているのは脳なのだそう。
私たちは、デザートは別腹だから、飲んだ後のラーメンは別腹だから、などと言うことがあるけれど、
これは、本来満腹だけれども自分が好きな食べ物や、食べたかったものを見ると、
脳が消化を促すようなホルモンを分泌し、この分泌されたホルモンによって消化運動が活性化するというのです。
しかし、消化運動が活性化したからといって、食べ物がすぐに消化されて跡形も無くなるというようなミラクルは起こせないため、
食べたものから順に小腸へグイグイと押し込み胃の中にスペースを作るのだそう。
イメージとしては、誰かを部屋に招き入れるために、部屋の中に散乱していたものをグイグイとクローゼットの中へ押し込み、
寛いでもらうスペースを確保するような状況に似ているのかもしれない。
これが、私たちがよく言う別腹の仕組みであり、正体だという。
実際にスペースが出来てしまうわけだから「別腹はある」ということになるのだけれど、
仕組みを知ると、思う以上に胃腸を酷使していることに気付いたりもする。
脳からの指令を突っ走らせてしまうのか、もう一度調整するのかは、私たちに委ねられているそうだ。
そして、甘いものは食べないから大丈夫、〆のラーメンは食べないから大丈夫と思った方もいらっしゃるかもしれないのだけれど、
この別腹は、自分の好きなものに対して起こるそうなので、
ケーキは食べられないけれどお煎餅なら食べられるという方や、ハンバーグだったら食べられるというようなことが、人によっては起こるのだそう。
別腹は、ここぞという時に頼る程度にして普段は胃腸を労わることも忘れずにお過ごしくださいませ。
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