数か月に一度ほど近況報告をし合う友人がいる。
この友人、いつ連絡をとっても忙しくしている。
互いに引っ越しを繰り返し、近くに住んでいないこともあり、直接顔を合わせることは殆どないのだけれど、
会おうと思えばあえる距離に住んでいたときも、今と左程変わらない頻度で連絡を取り合っていたように思う。
今と異なるのは、当時は食事をしながら近況報告を行えていたことくらいだろうか。
その友人から久しぶりに連絡があった。
次から次に飛び出す近況話の中に混ざる「たまにはゆっくりしたい」という言葉も、それが現実化する気配がないところも彼女らしくて笑ってしまった。
きっと、忙しく動き回っている方が性に合っているのでは?と言うと「自分でもそう思うし、多分、これが好き」と友人は笑った。
本人が心地良いのであれば、それが一番である。
「忙しさ」が話題にのぼるとき、私の中に思い浮かぶ存在がある。
それは「いそがし」という名の妖怪である。
初めて、その存在を知ったのは『ゲゲゲの鬼太郎』でお馴染みの水木しげるさんの何かしらだったように記憶している。
その後、仕事の関係で妖怪について触れる機会があり、「いそがし」は江戸時代に描かれた絵巻物内に登場した妖怪だと知った。
しかし、日本生まれの妖怪であることは間違いないようなのだけれども、その妖怪がどのような妖怪なのか詳細を記したものはないという。
そのような中、水木しげるさんが設定した「いそがし」像が、「妖怪いそがし」のひとつの姿として広まっている。
水木しげるさんの設定によると、「妖怪いそがし」は人にとり憑く妖怪で、
「いそがし」に取り憑かれた人は、じっとして過ごしていると何か悪いことをしているような気分になり、
忙しくしていると不思議と安心するため、忙しい状態でいることを止められないそうだ。
古き良き時代の日本人には「妖怪いそがし」が憑いており、妙な二人三脚が功を奏して時代を築き上げてきたのではというような空想を、ワタクシ柊希の勝手な脳内劇場で巡らせてみたりもしたのだけれど、ふと思う。
時代が大きく変わり始め、人が求めるものや目指すものにも変化が起きている昨今、「妖怪いそがし」もそろそろ隠居生活だろうかと。
休息することに罪悪感を覚えることがあるアナタ、「妖怪いそがし」にご注意あれ。
画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/