道ですれ違った女性が、羽を広げた孔雀のように見える扇子で扇いでいた。
すれ違うときに、ふわりと鼻先をくすぐったのは白檀の香りだったように思う。
僅かな時間のことだったけれど、扇子の美しさと上品な香りが、私の脳裏に強く焼き付いた。
自宅に戻っても尚、思い返される扇子の影響だろう。
私は久しぶりマラカイトのお手入れをすることにした。
マラカイトは孔雀石という和名を持つ石で、深くて美しいグリーンと、孔雀の羽を連想させるような模様を持っている。
この石は古代エジプト、ギリシャ、ローマ時代には既に発見されていた歴史ある石ということもあり、様々な言い伝えを持っている石である。
今の時代のように色を人工的に作り出すことが難しかった時代、このような艶やかな天然色をもつ石はさぞ、多くの人を魅了したことだろうと思う。
この石は、身に着けている人に危険が近づくと砕けてしまうと言われており、古くから子どもや旅人を護るお守りとして知られている。
他にも石の模様が目のようにも見えることから、ものごとを見通したり、邪悪なものを見定めて祓う石としても大切にされてきた歴史を持っている。
私は随分と前に人生のお守りにとの意味を込めていただいたものが一つあり、時々、ジュエリーボックスから取り出してはお手入れをしているのだけれど、不思議な魅力を纏った石という印象が強い。
マラカイトと言えば、クレオパトラがアイシャドウの材料として使用していた石だという記述を見かけることがある。
うろ覚えではあるのだけれど、ここで登場するクレオパトラは、世界三大美女の一人であるクレオパトラではなく、一代前のクレオパトラだとも言われている。
彼女はマラカイトを粉末にしたものにオイルを加えてペーストを作り、アイシャドウとして使っていたのだとか。
古代エジプトメイクを想像すると何となく分かるような気がするのだけれど、これに関しては賛否両論あることも有名である。
マラカイトは刺激が強い成分で構成されているそうで、これを目の周りに使うと、瞼の荒れや目への刺激を引き起こす懸念があるため、マラカイトをアイシャドウとして使うことは難しいのではないかという話だ。
しかし、粉末にし易い石であることや、絵の具の材料として使うことができるほどの発色の良さを思うと、
もしかしたら、マラカイトをアイシャドウとして使うことができる技術や特別なレシピがあったのではないだろうか、などと勝手な想像を膨らませたりもする。
まぁこれは、私の勝手な想像の範疇なので、真実は当時の人たちのみぞ知る、ということなのだけれど。
自然が生み出す色は、いつだって完璧で人々を魅了する。
マラカイト(和名:孔雀石)を目にする機会がありました際には、今回の何かしらをチラリと思い出していただき、その美しいグリーンをご堪能あれ。
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