久しぶりに豆かんを口にした。
豆かんは、みつ豆やあんみつに入っている赤茶色をした豆をメインに、寒天と黒密を合わせた大人のデザートである。
中には、子どもの頃から豆かんが好きだという粋な方もいらっしゃるかもしれないのだけれど、私は子どもの頃、みつ豆やあんみつに入っている、あの赤茶色の豆を邪魔もの扱いしていた口である。
今思えば、黒密や餡子、アイスクリームといったものの合間に口にする豆はほんのりとしょっぱく、あの塩味が箸休めのような役割を果たしていたことが分かるけれど、
“粋”とは無縁だった子ども時代は、あの乾いた食感を持った赤茶色の豆の良さを全く、理解できていなかったのだ。
そして、その時は不意に訪れるのである。
大人になり、知人に連れられて素敵な甘味処へ行ったのだけれど、あまりにも心惹かれるメニューがずらりとメニュー表に並んでいたこともあり、知人にこのお店のおすすめは何かと尋ねることにした。
すると、このお店で一番のおすすめは豆かんだと言うではないか。
「豆かん」をすすめられたときの私の脳内では、どうしておすすめなど聞いてしまったのだろうかと、後悔が騒ぎ出したけれど腹を決め、豆かんを注文してみたのだ。
すると、私がこれまで口にしてきた豆は何だったのだろうかと思うほどに、しっとりほくほくとした食感に炊きあげられた、しっかりとした豆の味が感じられる豆だったのだ。
その日からだ、赤えんどう豆を邪魔もの扱いしなくなったのは。
それでも、豆かんとあんみつがあれば、分かり易い華やかさを持ったあんみつに手が伸びることの方が断然多いのだけれど、美味しい豆かん探しも捨てがたい楽しみである。
先程から「赤茶色の豆」と言っている豆だけれど、正確には「赤えんどう豆」である。
えんどう豆は、成熟すると品種ならではの色に変化するため最終的な色は異なるけれど、
どの種類も、絹さや、グリーンピース、えんどう豆と成熟していく過程ならではの味を楽しむことができるという。
世界で日本食や日本人パティシエやショコラティエのスイーツが注目されてはいるけれど、そもそも海外では日本のように豆を甘くして食べるという習慣や発想を持たない国が多いため、
えんどう豆の中でも、収穫されたほとんどが和菓子の材料になるという赤えんどう豆の消費者は、ほぼほぼ日本人ということになるようだ。
気温の変化と共に、ひんやりとしたデザートの美味しさが増す季節でもあります。
機会がありました際には、赤えんどう豆の優しい甘さを味わってみてはいかがでしょうか。
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