久しぶりに花屋をのぞいた。
お目当ては、そろそろ出回り始めているだろうライラックである。
好きなお花は色々あるけれど、ライラックは私の中で割と上位ということもあり、この時季はライラック目当てで花屋をハシゴする。
いつの日か、両手に抱えきれないほどのライラックを、持っているものの中で一番大きな花器に生けようと心に決めているのだけれど、
その夢を未だ叶えていないのは、もう少しだけ、その時のことを想像して楽しみたいからである。
自分で自分のことを何だか面倒くさいと感じてはいるのだけれど、どういう訳か、この夢だけは淡い夢のまま抱いていたいような気がしている。
私がライラックの虜になったのはイギリスに住んでいたときである。
ライラックは涼しい気候を好むため、日本では北海島や札幌といった限られた土地や、ライラックに適した環境下でしか見ることができないけれど、
ヨーロッパでは割と至る所に植えられており、目にする機会も多かったように思う。
金木犀と同じモクセイ科ということもあり、花の姿形が似ているだけでなく、香水の原料にされるくらい甘くて華やかな香りを放つことでも知られている。
そして、ライラックはちょっとしたおまじないにも使われているのだ。
これは、当時お世話になっていたお宅のお嬢さんに教えてもらったのだけれど、通常ライラックの花びらは4枚なのだけれど稀に5枚のものがあるのだそう。
この貴重な5枚バージョンの花はハッピーライラックなので、誰にも見つからないように、気付かれないように摘んで飲み込むと恋が成就するという言い伝えがあるというのだ。
その話を聞いてしばらく経ってから、そのお嬢さんと2人で出かける機会があったのだけれど、街路樹として植えられていたライラックの中に、貴重なハッピーライラックがあったようなのだ。
彼女は、私に気付かれないようにこっそりとハッピーライラックを摘み、パクッと飲み込んだことを私は知っている……。
しかし、誰にも見つかってはいけないし、気付かれてもいけないのだと聞かされていた私は、「ハッピーライラック見つけたの?」なんて野暮なことを言いながら近づくわけにもいかず、この瞬間まで他言せずにいたけれど、あの時の彼女の恋が成就したのか、今更ながら少しだけ気になっている。
今年のライラックはどのような色合いを見せてくれるのだろうかと心躍らせながら花屋をのぞいたけれど、今回は残念ながら収穫なしの空振りに終わった。
ライラックの時季は4月から6月頃まで、また日を改めてリベンジを!そう思いながら帰宅した。
存在感を解き放つライラックですが、切り花のライラックは意外と花持ちが悪いと感じる方も多いかと。
ライラックは繊細な花木なので、花器に生ける際には、多すぎると感じるくらい多めのお水に生けると花持ちがよくなります。
あと、これは邪道かもしれないのですが、水に浸かる部分の枝の皮を剥いて生けると、枝木が水を吸い上げる面が大きくなるので、花と香りの持ちが伸びます。
ライラックの切り花を生ける機会がありましたら、可愛らしさと艶やかさを兼ね備えた花や甘く優しい香りを楽しみつつ、ハッピーライラックを探してみてはいかがでしょうか。
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