幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

蟷螂生ずから見るウィンウィンの関係。

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日差しに夏の気配が混ざり始め、吹く風が心地良いこの時季は、木陰を歩かないようにしている。

過去に幾度か、生まれたばかりの虫たちが木の上から落ちてきて衣類にくっついていたことがあったからだ。

重さを感じ取ることができない生まれたての虫に気が付くタイミングは、誰かが指摘してくれたときか、帰宅後に運よく自分で気付いたとき。

あとは、虫に触れられてしまった肌がかぶれて気が付くといったところだろうか。

私は、肌が謎のかぶれを起こしたことで虫の存在に気が付いたということがあり、もうあんな経験はご免だと思ってからは、本格的な夏がくるまで木陰はお預けである。

その日も、日差しを浴びながら信号待ちをしていた。

側には、園芸カルチャースクールの生徒さん方が寄せ植えをしたと記されたプランターが並んでいた。

植物の名前が分からなかったけれど、クレヨンケースを開けたみたいなカラフルな花が植えられており、淡い黄緑色をした若葉も花と一緒に風に揺れているように見えた。

一瞬、その若葉の動きに違和感を覚えたため意識を向けると、若葉の正体は、ファイティングポーズをとったカマキリだった。

少し前に手帳を広げ、もうすぐ「蟷螂生ず(かまきりしょうず)」に入るのかと思ったばかりだったこともあり、虫に対する苦手意識よりも先に、先人たちが残した暦と自然との関係性に感心してしまった。

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季節ならではの風景を動植物の様子を交えながら表現した七十二候(しちじゅうにこう)は、5日ごとに変わっていくのだけれど、

6月5日辺りから10日辺りにかけての5日間は、「蟷螂生ず(かまきりしょうず)」と名付けられている。

文字通り、カマキリが生まれる時期ということである。

ただ、寒すぎず暑すぎない、この時季を選んで生まれる虫はカマキリだけではない。

それなのに、七十二候(しちじゅうにこう)に堂々とその名を使われていることを不思議に思ったことがある。

これは昔、私の恩師が言っていたことなのだけれど、カマキリは稲が育つ頃に生まれ、稲をはじめとする農作物にとって害になる虫を片っ端から食べて成虫になるのだそう。

人にとって大切な農作物を守ってくれる益虫なので、特別な思いや感謝の気持ちから使うことになったのではないだろうか、と。

カマキリにはカマキリの都合や目的があり、人間のためにという意識は無いのだろうけれど、結果としてウィンウィンの関係であるということのようだ。

七十二候(しちじゅうにこう)の蟷螂生ず(かまきりしょうず)などと言うと、堅苦しい感じがしてしまうけれど、何ということはない。

カマキリが生まれる時季であり、人とカマキリはウィンウィンの関係にあるということを記し伝えたものである。

まだ成虫とは言い難い初々しいカマキリを見つけ、そのようなことを思う信号待ちである。

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