中途半端にできた時間を使って、キッチンに備え付けてある引き出しの整理を始めた。
日々、使っている引き出しばかりだから中の風通しは非常に良い。
ただ、使用頻度が高く調味料が飛び散ることもあるため、こうして時々、引き出しの中身を取り出してはザッと一掃するのだ。
ふと、開かずの引き出しに視線が止まった。
開かずの引き出しとは、ビルトインコンロと壁の間に作られた細長い収納スペースである。
引っ越すたびに付いているのだけれど、このスペースを活用できたことがない。
過去には調味料を入れてみたことがあったのだけれど、奥のものが取り出し難かったり、調味料が入っている容器のサイズが大きく限られてしまい二度手間になることが多く断念。
それならばと、お玉やヘラ、菜箸などの調理器具を入れてみたのだけれど、調理器具の収納場所が分散することによって、これもまた二度手間になることが増え断念。
では、予備の乾電池でも入れておこうかしらと試すも、予備の乾電池を入れていることを忘れてしまうという失態が続き、これもまた却下。
他に何か……、そう思って入れたのはお誕生日やホームパーティーの演出、調理器具に使えそうなロウソク類、細長いスペースを活かすためにクッキングシートや、ラップ類も収納してみたけれど、どれもしっくりくることはなく。
今は空っぽの開かずの引き出しである。
目立つような取っ手が付いているわけではないため、化粧パネルだと思えばそれで良いのだけれど、掃除をする度に、引き出しとしての機能があるのに使わないなんて何だか残念、そのような気持ちがするのである。
そもそも、どうして中途半端な引き出しが付いているのだろうか。
今更?とも思ったのだけれど、このタイミングで調べてみることにした。
すると、この引き出しの存在は「消防法」の関係で作られた引き出しだということが分かった。
近年のコンロの性能は上がっているとは思うのだけれど、消防法により、コンロは壁から15センチ以上の距離を取らなくてはいけないのだそう。
仮に、コンロと壁の距離が近すぎたり、くっついた状態でコンロを使い続けた場合、コンロの熱が少しずつ壁にダメージを与えて壁の中を炭化させ、何かの拍子に火災を引き起こすことが考えられるため、予防策のひとつだというのだ。
この理由を知ると、以前私が試した予備の電池を入れる、ロウソクやクッキングシート、ラップ類を入れておくというのは、何気にリスキーである。
調味料に関しては、高温になる場所ということを思うと、食品の品質を小まめにチェックする必要がある。
となれば、引き出し内に熱が困らない程度の調理器具を収納するくらいに留めておくのが、今のところ安全だと言えそうだ。
しかし、私にはその用途が合わないことが分かっており、引き出しとしての機能があるのに使わないなんて何だか残念。
やはりそう思ったものだから、世の中の皆さんの知恵を拝借できないだろうかと、ネットの海へダイヴした。
すると、この引き出しの存在に気付いていない方も多くいらっしゃるようで、時折、この引き出しの存在が話題になっているようだった。
それはそれで、消防法という観点で見るならば、とても安全な状態なのだけれど、存在に気付いた方はいったい何を。
増々気になるソノ引き出しを、今回もまたひと拭きし、静かに閉じた日。
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