小雨がパラついていたその日。
リビングで外を眺めながら紅茶を飲みつつひと息ついていたのだけれど、ふと、6月だからパールのお手入れでもと思い立ち、アクセサリーとお手入れ道具一式をリビングへ持ち出した。
ズボラな私は、こうした小さなきっかけを利用していかなくてはズボラ道を極めてしまいそうで、思い立ったが吉日と、自分で自分の背中を押すのである。
自分のものや周りの方が身につけているもの、仕事で素材として触れたものなど、色々なパールを目にしてきたけれどパールも不思議な存在のひとつだと感じている。
パールは、年月を経るにつれ少しずつ色味が変わっていくけれど、不思議なことに持ち主の肌の変化に寄り添うにして変化していくように思う。
この色の変化は劣化の類の色褪せとは異なる印象があり、持ち主自身はあまり気が付ないのだけれど、
20代の頃に手にしたパールを、40代、50代になっても違和感を覚えることなく身に着けられるというようなとき、パールには不思議な変化が起きているのだ。
パールは天然石、宝石というカテゴリーで扱われており、粒の大きさや照りといった品質を出来る限り揃えた状態で店頭に並べられている。
このため、無意識に揃っていて当たり前、どれを購入しても同じだと感じてしまう
ことが多いけれど、パールは本来、鉱物ではない。
貝の中に入り込んだ砂などを異物だと判断した貝が、自分の身を守るために分泌する粘液で異物を包み込んでいき、これがパールとなる。
異物だったものが宝石として扱われるパールになるまでには、貝の中で異物を、肉眼では見ることができないほど薄い粘液の膜で気が遠くなるほどの回数、包み込む作業が行われているという。
時々、「私はパールが似合わなくて」と言う方がいらっしゃるのだけれど、パールは、サイズや色がパッと見て似ているものであっても、自分に似合う物と似合わない物がある。
本当に自分の肌の色や質感に合うものとの出会いがあれば、持ち主に寄り添うようにして色が変化していくのだ。
そして、一般的にフォーマルに適したサイズ感というものはあるけれど、サイズによっても自分に似合うものと似合わない物とあり、サイズが1ミリ違うだけで、雰囲気も随分と変わるのである。
だから、本当はパールが好きだけれど似合わないから付けないという話を耳にすると、とても勿体ないように思う。
6月の誕生石でもあるパールを身に着けたいと思ったときには、妥協せず、お店の方に遠慮せず、素敵な出会いの瞬間がくるときを、楽しみながら待って吉である。
気候に左右されずに楽しむことができるイミテーションパールも、様々な色合いのものがあるけれど、こちらも同じ。
パールだから似合わないと決めつけずに、物は試しと様々な色やサイズの試着を重ねていると、いつかその時が。
何でも簡単に手に入る時代ではあるけれど、“その時”を心待ちにしながら過ごすのも、アクセサリーの醍醐味のひとつだろう。
パールに限らず何ごとも、決めつけずに柔軟に楽しんでみると、ほんの少し自分の世界が広がるように思う、梅雨の頃である。
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