7月17日辺りから、七十二候は「鷹乃学習 (たかすなわちわざをならう/たかすなわちがくしゅうす)」という期間に入る。
どのような時季なのかと言うと、この文字の並びから想像できるとおり、今年生まれたばかりの幼い鷹が、飛ぶことや獲物の狩り方など生きるために必要なことを学習する時季だという。
「鳥」と一口に言ってもその種は様々。
その頂点に君臨しているのが鷹なのだけれど、この鷹が人間が使う暦に登場するということは、先人たちが鷹を特別な対象として見てきた印でもある。
鷹は、巣立った後は群れずに生きる鳥だけれど、頼ることが出来るのは自分だけという厳しい環境下で生き抜かねばならないため、非常に忍耐強く学習能力が高い鳥としても知られている。
聞くところによると、狩りで失敗をするとその失敗から様々なことを学び、失敗した経験を次の狩りに活かすのだそうだ。
もちろん、鷹それぞれに性格というものが備わっているため、全ての鷹が己の失敗を次の狩りに活かしているというわけではないようだけれど、
このような忍耐強さや学習能力が低い鷹は生き抜くことが出来ないそうで、自然淘汰されるのだとか。
なかなか、厳しい環境である。
しかし、あの凛々しい顔つきや佇まいは、そのような世界を生きているからこそなのだろうと、鷹の性質を知って思った。
鷹は人間にとって、銃がない時代から獲物を獲るための手段でもあったわけなのだけれども、
他の何ものとも組まない気難しい性質の鷹が、唯一パートナーを組んだのが人間である。
世界中の至る場所で、その土地の文化をもとに人間と狩りをしてきたのだけれど、日本人と鷹との関係は少し変わっているという。
外国では獲物を狩るとき、鷹が鷹のタイミングで飛び立ち獲物を狩るという。
しかし、日本では鷹を使って狩りをする鷹匠(たかじょう)と呼ばれる人と鷹が呼吸を合わせ、鷹が目指したいポイントへ向けて人が鷹を投げ放つそうだ。
こうすることで鷹が持っている力に人の力が加わり、素早く獲物を捕らえることができるのだとか。
ただ、そうなるまでには鷹と人間との間に確かな信頼関係が築かれていなければいけないそうで、繊細で気難しい鷹を育てる鷹匠(たかじょう)という職は、非常に難しいもののようだ。
そして、この鷹匠(たかじょう)という職業。
日本では、鷹と鷹匠(たかじょう)によって、儀式に使用するための獲物を狩るなどしていたため、鷹匠(たかじょう)は戦後辺りまで宮内庁に所属していたそうだ。
私は海外で鷹狩りのパフォーマンスを観たことがあるのだけれど、現地の方々から、日本の鷹はお行儀が良いんでしょ?と尋ねられることがあった。
初めて尋ねられた時は答えに困ったけれど、調べてみると、厳かな雰囲気の儀式の場で獲物を捕らえたり、その時を待ったり、時にエサを食べるなどしなくてはいけない日本の鷹は、
そのような場に相応しい礼節も鷹匠によって教えられているのだと分かった。
鷹が本来持っている性質がそう簡単に変わるようには思えないため、人間をパートナーに選んだ鷹は、共に生きようと思えるような人間に出会えたということなのだろうか。
そう思うのと同時に、損得勘定抜きで曇りなき眼差しを向けてくる鷹を相手にする鷹匠(たかじょう)という職は、自分にも相手である鷹にも嘘を付けない、神聖な職業だとも思う。
この鷹が登場する七十二候「鷹乃学習 (たかすなわちわざをならう/たかすなわちがくしゅうす)」は、本日からでございます。
鷹を目にする機会は多くはありませんけれど、生まれて一カ月足らずで巣立つ準備を始めた幼き鷹にエールを!
失敗したっていいじゃない、次に活かすことができるなら。
そのようなポジティブシンキングで、本日も口角をキュッと上げてまいりましょうね☆彡
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