ガーデンチェアでひと息ついていると、塀の上部にある何かに光が反射した。
立ち上がると、オレンジ色をした小さなボタンのよう見えたものだから、オレンジ色のボタンを無くした記憶を探しながら近づいて手を伸ばした。
あまりの小ささとオレンジ色の上にビッシリ点在する黒点にハッとして、伸ばした手を引っ込めた。
てんとう虫である。
その日は、梅雨らしい雨と上がらぬ気温で肌寒い日だったけれど、そのてんとう虫は背中に大きな雨粒を背負った状態でそこにいた。
自分の体感温度と重ね合わせてしまったのか、その様子が、雨粒で冷える体をギュッと縮こまらせているようにも見えた。
余計なお世話だと分かってはいたのだけれど、袖口の先をそっと近づけて雨粒を吸い取ると、オレンジ色に黒いドット柄の背中が際立った。
てんとう虫は幸運を運んでくるハッピーモチーフとして知られているけれど、中でも黄色いてんとう虫はハッピー度もアップすると聞く。
オレンジ色は、赤色と黄色の間に位置する色だから、オレンジ色のてんとう虫も、黄色系ということで、ハッピーの域に片足くらいは突っ込んでいるのだろうか。
私が以前、フランスの子どもたちに教えてもらった話を思い返すと、多分これは一般的なハッピーである、おしい!!
人は欲深い。いや、私が……か。
そのようなことをチラリと思ったりもしつつ、目の前のてんとう虫を眺めていると、体が温まったのか休憩を終えたのか、塀の外側へと歩きだした。
てんとう虫を見送り、飲みかけたままのレモンティーに手を伸ばし、私の休息も仕切り直しである。
何気ない時間なのだけれど、妙にありがたく感じられたのは、先日五風十雨(ごふうじゅうう)という言葉を目にしたからだろうか。
日々、国内だけでなく世界中の至るところで大小様々な規模の地震が発生しているけれど、この言葉は、5日置きに風が吹いて、10日おきに雨が降るような気候であれば、農作物が順調に育ち、豊作に繋がる兆しを表しているのだとか。
もとは、中国の思想家の著書に記されていた文章から抜粋されたものだということなのだけれど、お天気を表すことわざとしても知られている。
そして、この豊作の兆しとも言えるお天気の流れから転じて、平和で穏やかな世の中のことや、そのような会社内の状況などにも五風十雨(ごふうじゅうう)という言葉を使うことがあるのだそう。
プライベートで使用する機会はそう簡単には訪れない言葉だけれど、
このようなペースで平和且つ穏やかな気候や環境が続いてくれたなら、農作物に限らず人や動植物にとっても、非常に過ごしやすいように思う。
失敗してみなくては分からないことも多々あるけれど、荒れまくっている気候の中に身を置いていると、気候は世界を映す鏡だったりして、と思うこの頃である。
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