子どもの声で奏でられる懐かしいメロディーに意識を引っ張られた。
しかし、次の瞬間には、その懐かしいメロディーに乗せられた歌詞に「えぇっ!?」と声を上げてしまいそうになった。
そのメロディーというのは、誰もが一度は歌ったことがあるだろう手遊び歌のひとつ、「お弁当箱の歌」である。
私の記憶からは薄れつつある歌で、覚えている歌詞と言えば、「♪これっくらいの、おべんとばこに、おにぎり、おにぎり、ちょいとつめて。きざみしょうがに、ごましおふって……」までになってしまっているのだけれど、私が知っているお弁当箱の歌はこれである。
そしてその日、私の前を歩いていた子どもたちが、このお弁当箱の歌を楽しそうに歌っていたのだけれど、彼らが歌っていた歌詞は、私が知っているそれとは異なっていた。
聞こえてきた歌詞は、「♪これっくらいの、おべんとばこに、サンドウィッチ、サンドウィッチちょいとつめて、からーしバターにマヨネーズぬって」と続き、お弁当の中身が和風から洋風に変化していることに大きな衝撃を受けた。
このような出来事に遭遇すると、私の中の調査ゴコロが疼き、早速リサーチ開始である。
そして遅ればせながら、私が知っていたものが無くなったわけではなく、新たにサンドウィッチバージョンが登場していることを知ることとなった。
しかも、私が聞いた歌詞に登場する食材以外の食材を使ったサンドウィッチメニューバージョンもあるではないか。
試しに、彼らが楽しそうに歌っていたバージョンを小さな声で歌ってみたのだけれど、思うよりも歌いやすい歌詞に仕上げられており感心してしまった。
サンドウィッチバージョンの全容は、こうである。
「♪これっくらいの、おべんとばこに、サンドウィッチ、サンドウィッチちょいとつめて。からーしバターにマヨネーズぬって、いちごさん、ハムさん、きゅうりさん、トマトさん、まるいまるいサクランボさん、すじのはいったベーコン♪」
この日はじめて、この手の歌が進化することを知った。
そして、頭の中がサンドウィッチでいっぱいになってしまった私は、キッチンでフランス人のソウルフードのひとつに挙げられることがある、ジャンボン・ブールを作ることにした。
作ると言っても、所要時間1分弱のシンプルサンド。
用意するのはバゲッドにバターとハムのみ。
私が拘るのは、無塩バターを少しだけ練って柔らかくしたものを使うことと、丁寧に作り過ぎないこと。
バターは、ザザーッと大胆に塗り、気持ち厚めにカットしたスライスハムを挟んで出来上がり。
気分によっては、粒マスタードを挟むこともあるのだけれど、この日は王道スタイルのジャンボン・ブールをフレッシュジューズと一緒に。
それにしても、お弁当の歌にサンドウィッチバージョンが登場していたなんて。
手遊び歌も気分で歌い分ける時代だということに小さな衝撃を受けた出来事である。
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