少し遅めの梅雨明けの後に、帳尻を合わせるかのように押し寄せてきた今年の暑さに半ば項垂れながら歩いていると、
キャンプかBBQか、はたまた海にでも持って行くのか、軽装の集団が大きなスイカを数個、車に積み込んでいるところを目にした。
この暑さは苦手だけれども、キンキンに冷えたスイカを、より一層美味しいと感じられるのは、この暑さあってこそである。
水分補給と浮腫みを取り除いてくれるカリウム摂取を兼ねることができるスイカは、この時季積極的に摂りたいフルーツだけれども、あの小さな種が少々厄介だ。
切り分けたスイカを眺めると、種ばかりが目立つパーツと種の姿が見えないつるんとしたパーツがある。
このパーツによる種のムラを無くすには、スイカの縞模様を避けるようにして切り分けると良いと言われている。
これは、スイカの種が縞模様の下に集中している性質を利用した、スイカの断面に種を出さずに、見た目をキレイに整えるためのカット方法だ。
しかし、ワタクシ、毎年思うのである。
スイカの種を断片に出さずに盛られていると確かに見た目は美しいのだけれど食べ難い、と。
種は中に隠れているよりも表面に出てくれていた方が取り除きやすく、
取り除いたあとのスイカだって、安心して味わえるではないかと思っているのは私だけだろうか。
どのようなものの中にも例外はあり、縞模様の下にお行儀よく収まっていたくなかった種が口の中に入ってしまうことは想定内だけれど、
それでも、大人レディーたるもの、口の中から種を取り出す回数は出来る限り減らしたいではないか。
田舎の縁側でスイカを頬張り、口の中の種を勢いよくぷぷぷぷーっと吹き出して遊ぶことができる少年少女たちには、スイカの種を中に納めた切り分けで。
一方の、大人レディーにはスイカの種を断片に出した切り分けで。
私は密かに、そのようなことを思っている。
大きなスイカを消費できない我が家は、既にキューブ状にカットされたスイカを買っているため、多すぎず少なすぎずの量の種が口の中に現れるのだけれど、
お客様用のスイカをカットする際、見た目重視でカットするべきか、大人レディー仕様でカットすべきか悩むところである。
もし実家のキッチンでそのようなことを漏らせば、「そんなことはどうでもいいから早くカットして」と母の声が聞こえてきそうだけれど、
これは、おもてなしの二者択一と言ってもいいのではないだろうかと思っていたりする。
そう言えば、スイカは中心部分が一番甘いため、出来るだけ中心部分がみんなに行き渡るように切り分けるけれど、これは、スイカが鳥たちに仕掛けた罠だという。
皮のすぐ近くに甘い部分を出してしまうと、奥まで突いてもらえず、種を運んでもらうことができないため、出来るだけ種を多く口にしてもらおうと、甘くておいしい部分を中心部分に隠しているのだとか。
最近耳にした話なのだけれど、スイカの心、人知らずといったところだろうか。
そのようなことをぽつりぽつりと思い出しつつ、眩しすぎる日差しに目を細める午後である。
関連記事:
画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/