私は肌が弱いこともあり、スキンケアもコスメも使うことができるものが限られている。
これならば使えるぞと感じるものに出会うことができたとしても、それらは需要が少ないのだろう、早々に廃盤となるケースが多い。
また、成分内容に問題がないからと言って、使い心地や求めている効果が自分に合うとは限らず、気が付けば常に成分情報にアンテナを張り巡らせていることが当たり前の状態である。
これを不幸中の幸いと言ってよいものかは分からないけれど、お年頃と呼ばれる年齢からこのような状況だったこともあり、いつの間にかその作業を面倒だとか大変だとか思うことも無くなってしまっている。
しかし、見ているだけで気分が上がるパッケージデザインのものや新しい成分を楽しみたい気持ちが消えることはなく、実験や調査、社会科見学気分で話題の成分をのぞいている。
私のことはさておき、ここ数年注目しているのは卵殻膜(らんかくまく)エキスと呼ばれるものだ。
簡単に言うならば、ゆで卵を作ったときに殻と卵の間にある薄い膜、卵の薄皮のようなもののことである。
ここ数年の間に、卵殻膜(らんかくまく)から抽出したエキスを配合しているという商品を目にする機会が増えているのだ。
今回は、この卵殻膜(らんかくまく)と呼ばれる卵の薄皮のお話を少し、と思っております。
ご興味ありました際には、ちらりとのぞいていってくださいませ。
ゆで卵を覆う薄皮と聞いた私は、今は亡き祖母から聞いた話を思い出した。
もう遠い遠い日の話なのだけれど、祖母とゆで卵を食べていた時のことだ。
祖母が、この薄皮を擦り傷や切り傷などに貼り付けると絆創膏のような役割をしてくれ、傷の治りが早くなると言ったのだ。
祖母の時代はそうだったのかもしれないけれど、傷を負う度にゆで卵を作るより絆創膏を貼る方が早くてラクで衛生的。
子どもながらにそのようなことを思ったけれど、それを祖母に伝えるのは何となく可哀想な気がして思ったことを飲み込んだことがある。
それから随分と年月が経った頃、江戸時代辺りには既に、この薄皮を使った生活の知恵が存在していたことを知り、祖母との会話をぼんやりと思い出した。
この卵の薄皮、卵殻膜(らんかくまく)は、よくよく見てみると、とても丈夫なメッシュのような構造をしており通気性が良いという。
しかし、水を通してしまうほどのメッシュ状ではないため、卵の中で育つ雛に新鮮な空気を送りつつ様々なウイルスから守っているのだとか。
更に、成長過程の雛に必要な、傷を修復したり細胞を成長させるコラーゲンやヒアルロン酸、アミノ酸、その他様々な成分を含んでいるという。
今は衛生面などの問題から、卵殻膜(らんかくまく)を直接傷口や肌に貼り付けることには賛否両論あるけれど、時代が変われば確かに有効な知恵のひとつである。
ここからヒントを得たのか、今は現代の技術を使って、卵殻膜(らんかくまく)に含まれている有効成分を抽出してスキンケア商品やコスメに使用されているようだ。
このようなことを聞けば、ゆで卵は薄皮ごと食べるといいのでは?という思いが頭の中を過るけれど、これはナンセンスだという。
確かに、薄皮そのものには美容成分がぎゅーっと詰まっているのだけれど、雛を外敵からガードする役目を担っていた膜である。
私たちの胃腸のチカラを以ってしても、消化することも有効成分を体内に吸収することもできないため、薄皮はしっかりと取り除く必要があるという。
卵殻膜(らんかくまく)に限っては、安易に欲張ってはダメということのようだ。
ゆで卵を調理したり、召し上がる際には、今回の卵核膜(らんかくまく)という名の薄皮のことを、チラリと思い出していただけましたら幸いです。
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