町の和菓子屋さんといった雰囲気の小さなお店を見つけた。
大人が2、3人も入れば身動きが取れなくなりそうな、小さなお店である。
店頭に数種類のお饅頭が並べられていたけれど、お店の方の姿は外からは確認できなかったところをみるに、御用の際はお呼びくださいスタイルなのだろう。
お店の方からの店に入るの?入らないの?というプレッシャーを受けずに済む状態をいいことに、少し立ち止まってお店の様子を窺わせていただいた。
もし仮に、お店の奥で、防犯カメラを通してこちらの様子を確認されていたのなら、怪しい人に認定されたに違いない。
そう思ったら急に、変な焦りを感じて足早にその場から立ち去った。
おまんじゅう専門店なのか、日替わりで和菓子が登場するのか、取り扱い商品の情報は得られなかったけれど、お品書きかと思ったお店の貼り紙には「御八つにいかが?」とあり、確かに和菓子を扱っているということだけ、知ることができた。
「おやつ」は「御八つ」と書くことがある。
とても古い表記で、私は読み物以外の場所でそう書き記されているところを、この日初めて目にしたように思う。
江戸時代辺りまでの日本は、日の出から日没までを昼とし、日没から日の出までを夜とする、ざっくりとした時間割りを使って生活していた。
こうして分けられた昼と夜を更に細かく分け、24時間に十二支を当てはめて数えていた。
今でいう深夜0時(午前0時)から十二支を「子」から順に当てはめていくのだけれど、ひとつの干支に2時間を担当してもらうというイメージだ。
そして、ひとつの干支に担当してもらう2時間を、更に30分ずつの4つのパートに分け、1番目のパートを「一刻」もしくは「一つ時」と呼び、次いで二刻/二つ時、三刻/三つ時、四刻/四つ時と呼ぶことで時刻を表していたのだ。
このような時間割から御八つ(おやつ)を見てみると、御八つ(おやつ)の「八つ」は、今でいう午後2時から4時辺りまでの時間帯のこと。
この時間帯は、子の刻から数えて8番目の時間のことで八の刻(やつどき)と呼ばれており、その八つ刻(やつどき)に食べる食事ということから「御八つ(おやつ)」と呼ばれるようになったと言われている。
私たちにとって「おやつ」は、お菓子や果物という印象が強いけれど、本来は午後2時から4時辺りまでの時間帯に食べる食事のことで、お菓子や果物に限定されているわけではなく、おにぎりを食べてもラーメンを食べても「御八つ(おやつ)」ということになるのだ。
1日2食が当たり前だった先人たちにとっての「御八つ(おやつ)」は、至福を味わうものというよりは栄養補給、エネルギーチャージの役割が大きかったのだろうけれど、私たちにとっては、至福寄りのものであるように思う。
偶然見つけた小さな和菓子屋さんの「御八つにいかが?」の貼り紙から、そのようなことを思った日。
おやつを召し上がる際に、今回のお話の何かしらをチラリと思い出していただけましたら幸いです。
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