書斎部屋のキャビネットの上に、白いパフュームキャンドルを置いている。
いつだったか忘れてしまったけれど、友人が贈ってくれたものだ。
キャンドルポットは、女性の手のひらに乗せることができるくらいの大きさで、大きすぎず小さすぎずというサイズ感なのだけれど、磁器製だからなのか、見た目よりもずっしりとした心地良い重みがある。
そして、キャンドルポットの蓋の上には番いの白い鳥が仲睦まじく寄り添っており、眺める度に気持ちがふわりと軽くなるところが気に入っている。
磁器や陶器と聞くと頭の中がこちゃごちゃしてくるけれど、磁器は「石もの」、陶器は「土もの」と表現されたりもする。
磁器は、ガラスの材料に使われる成分を多く含んでいる石の粉に粘土を混ぜているため、焼きあがると表面を薄っすらとガラスでコーティングしているかのような艶と滑らかさが出るのが特徴だ。
一方の陶器は、地中の粘土を使って作られるため、温かみを感じる質感や感触に仕上がるという特徴がある。
このパフュームキャンドルポットは前者の磁器製で白一色のシンプルなものなのだけれど、艶と滑らかな質感が華やかさを添えてくれている。
番いの鳥を摘まんで蓋を開けると、甘くて深い、寒い季節がよく似合う、とても贅沢なよそ行きの香りがする。
友人は、キャンドルは直ぐに使い切ってしまうだろうと予想し、キャンドルを使い終えたあとは小物入れとして楽しめるように、この蓋つきタイプを選んでくれたように思う。
しかし私は、キャンドルに火を灯すどころか、揺れる炎と熱を加えられた香りの変化を想像しながら、香りをちびりちびりと楽しんできた。
ここのところ気温が少しずつ下がってきていることもあり、そろそろ蓋を開けっぱなしにして、部屋の温度によって優しく広がる香りを楽しもうかと、先日久しぶりにポットの蓋を開けたところ、諸々の気分がピタッと合い、初めてそれに火を灯した。
初めは燃える芯の苦い匂いがしたけれど、すぐに贅沢な香りが広がった。
私の想像を超えていたのは、炎のオレンジ色が白い磁器に反射して、そばに置いていた蓋の番いをほんのりとオレンジ色に染めたことだ。
その優しい色合いは、火を灯さなくては分からなかったこと。
どうしてもっと早く火を灯さなかったのだろうかと思ったけれど、優しい雰囲気の番いの鳥たちを眺めていたら、そのようなことはどうでもよくなってしまって、ポットを手に各部屋を周りリビングで少しの間、炎を眺めて火を消した。
あっという間に火を灯した状態の虜になり、もっと、もっとという気持ちが湧いていたけれど、纏う香りは残り香ほどが私の好み。
ここはグッと堪えて潔く、である。
パフュームキャンドルに限らず、朝の匂い、夜の匂い、玄関を開けたときの外の匂い、自宅の匂い、洗いたてのシーツの匂いなどなど、
香りには色も形もなくて目で見ることはできないけれど、心地良い香りは、人の気持ちを和らげてくれる不思議アイテム、魔法の類のように思う。
これからの季節に合う香りは、春夏のそれとは異なる雰囲気をしています。
暮らしの中で感じられる香りを、自分センサーで楽しんでみてはいかがでしょうか。
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