街中の木々の葉も色に深みが増し、早いものは少しずつ散り始めている模様。
今年は秋の始まりが遅かったような体感が未だに残っており、景色が移り変わる速度に気持ちが思うように追い付かない。
秋を感じ足りていない私は、本当にもう晩秋?と疑いにも似た眼差しを辺りに向けた。
すると、クリスマスケーキやお節の予約ポスターなどが目に飛び込んできたりもして、今年何度目かの、「あっという間だ」という声なき声が脳裏に浮かんだ。
と同時に、ようやく晩秋であることを受け入れられたような気がした。
まだ目にしていない真っ赤に染まった紅葉をいつ、どこで眺めるか、そのようなことを頭の片隅で考えながら歩いていると、腹巻をした木を何本も目にした。
こちらはひと足先に冬支度を施されていた。
腹巻と言ってしまったけれど、正しくは「こも巻き」と言うのだと、数年前に教えていただいた。
「こも巻き」は、松や杉の木の一部に、藁で作られた「こも(菰)」と呼ばれる布の様なものを巻き付けることで、この時季に見ることができる風物詩のようなものでもある。
なんでも、こうして木の一部に「こも(菰)」を巻き付けることで、この温かい藁の中に害虫の幼虫たちが集まって冬を越すため、春がきたら「こも(菰)」ごと焼いて、害虫から木を守ることができるのだとか。
そして、この害虫対策は江戸時代から行われてきたものだという。
私は、その見た目から寒さ対策だと思っていたのだけれど、予想外の理由だったものだから知ったついでに、「こも巻き」の「こも」とはどのような字を書くのだろうと調べてみることにしたのだ。
すると、「菰(こも)」と記すことがすぐに分かったのだけれど、同時に「こも巻き」は、害虫だけでなく益虫も一緒に焼き尽くしてしまうことが研究者たちによる研究で分かり、取り止める傾向にあるという事実を知ることとなった。
そして思い出したのである。
木の幹に巻かれる藁は寒さ対策の腹巻ではなく、害虫対策の「こも巻き」だと教えて下さった方が、「こも巻きは自分にとって重労働なのだけれど、木の為に老体に鞭打って毎年巻いてあげている」と仰っていたことを。
あの時は胸の中がざわついたけれど、あの方も今は、重労働から解放されて他の方法で杉や松の木に愛情を注いでいるのだろうか。
減りつつある「こも巻きスタイル」の杉の木を見て、そのようなことを思った晩秋の夕暮れどきである。
腹巻スタイル、いや、「こも巻きスタイル」の木を目にする機会がありました際には、今回の何かしらをチラリと思い出していただけましたら幸いです。
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