カフェの窓際を陣取ってミルクティーを口に運びつつ始めたのはマンウォッチング。
世の中には様々な人がいるのだと手っ取り早く実感できるマンウォッチンは、幾度繰り返しても飽きることはない。
その日は、男性女性を問わずトレンチコートを身に纏っている方々を多く目にしたように思う。
私自身、トレンチコート好きということもあり、つい、道行く人のトレンチコートやその着こなしに視線を向けてしまうのだけれど、
秋が始まると店頭に並び始めるそれは、トレンチコートと一口に言ってもその年らしさを盛り込んだデザインのものから伝統的な正統派デザインのものまで幅広く取り揃えられており、着る人によって雰囲気が大きく変わるアイテムだ。
今でこそファッションアイテムの定番のひとつとして定着しているけれど、もとは英国軍の身を護るための軍服として生まれたものだと言われている。
品名にも使われている「トレンチ」は、確か、敵からの攻撃から身を護るために作られた穴などのことを指す言葉だったと記憶している。
だから、伝統的な正統派デザインのトレンチコートは、何やら色々なパーツが至る所に取り付けられている。
私はトレンチコート好きではあるけれど、あの数々のパーツはあまり好みではなく、出来るだけシンプルなスタイルにしたものを求める傾向にあるのだけれど、
伝統的な正統派デザインに惚れ込んでいる方の前で、うっかり、できるだけ余分な飾りがないものを探していると口にし、パーツひとつひとつの役割を聴く羽目になって後悔したことがある。
しかし、自分の好みや着る、着ないは別にして、トレンチのパーツの意味を知ると、とてもよく考えられたデザインであることが分かり、古のデザイナーの諸々に触れるような思いがしたのだ。
例えば、トレンチコートの右側、胸部分に当て布が付いているけれど、これはコートの中に雨が入り込まないよう、ボタンを留めた上に被せるための布でストームフラップと呼ばれている。
両肩の上には短い帯のようなものが縫い付けられているけれど、こちらは階級バッジを付ける場所であるのと同時に、肩掛けするものに付いているストラップが肩からするっと滑り落ちないようストッパーの役目も担っているのだそう。
ワタクシ、この肩の上にある短い帯状のものがあるとバッグのストラップが引っ掛かって厄介だと感じていたのだけれど、敢えて引っ掛かるように作られたデザインだと知り、その効果に感心したことは言うまでもない。
他にも肩から背中側へ向かって当て布が付いているけれど、この布も雨が背中の生地から浸み込まないよう計算して付けられているという。
他にも様々なパーツが取り付けられているけれど、そのひとつひとつに意味があり、決して飾りではないのである。
伝統的な正統派デザインに惚れ込んでいる方の話を思い返すと、平和な世の中で着用すると不要だと感じるパーツもあるのだけれど、上手に使いこなすことができれば、トレンチコートの本領をより発揮させられるのかもしれないと感じたりもした。
そのような記憶と共にトレンチコートの凛とした佇まいと道行く人々を眺めながら、秋から冬への移り変わりを感じた午後である。
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