幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

花よりもコーヒーとタバコが好きだという店主から教わった葉牡丹のはなし。

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道すがらにあった花壇に葉牡丹がぎゅうぎゅうに敷き詰められていた。

葉牡丹が想像できる以上に成長してしまったのか、このぎゅうぎゅう感を狙って植えられたのか、真意は分からないけれど、信号待ちをしている間、その葉牡丹の密集風景に見入ってしまった。

不思議なもので、とても窮屈そうに見えたその風景も次第に、葉牡丹がおしくらまんじゅうをしているかのように見え始め、これはこれで面白いと思った。

葉牡丹と言えば、この時季の日本の風物詩に寄り添う植物のような印象を抱くけれど、もとはヨーロッパの植物だという。

その見た目からも想像できるけれど、キャベツやブロッコリーなどと同じ種類の植物ということもあり、葉牡丹は花キャベツの和名を持っている。

しかし、牡丹の花びらが重なり合っているかのように葉牡丹の葉も重なりあっている様子から名付けられた葉牡丹の名が使われることが多いように思う。

海外で暮らしていた頃、縁があって時折フラワーショップのお手伝いをすることがあったのだけれど、そこで葉牡丹を目にした私は、日本の葉牡丹はこんなところまで遠征しているのかというようなことを店主に言い、これはヨーロッパの植物だと教えられたことがあった。

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店主は、どうして日本でそれほどにまで人気があるのかと聞いてきたため、当時の私は、お正月飾りとして使われる植物だと説明しながら、門松やお正月用の寄せ植えなどのイラストを描いて見せたように思う。

そして、それを聞いた店主は、日本でお正月飾りに使われるほど人気と知名度が高いことに驚くと同時に、名前付けが素晴らしいと深く関心していたように記憶している。

それもそのはず、ヨーロッパでは鑑賞用(お飾り)キャベツ、観賞用(お飾り)ケールという意味合いの名前が付けられていた。

ヨーロッパで使われている名前も、日本人と同じように見て感じたまま付けられているのだけれど、日本人のこういった細やかな感性は、やはりピカイチだと誇りに感じたことを久しぶりに思い出した。

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それから随分と年月が経った頃、葉牡丹は葉っぱを楽しむだけでなく、花を咲かせることができることを知る機会があった。

残念ながら、その咲き姿は未だ実物を目にしたことはないのだけれど、くねらせながら伸ばした茎の先に花を咲かせた葉牡丹は、「踊り葉牡丹」と呼ばれるのだそうだ。

幾度か、写真等々で踊り葉牡丹を目にしたのだけれど、確かに葉牡丹が躍っているような姿をしていた。

葉牡丹は、見るからに艶やかな牡丹よりも安価で購入することができる上に、寒さに強くて丈夫で育てやすいという理由から、牡丹の替わりとして普及した植物だと聞くことがあるけれど、ここまでくると葉牡丹は既に、日本オリジナルの植物だと言ってもいいのではないだろうかと思ってしまう。

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そのようなことを頭の片隅にチラつかせつつ、目的地へと向かう中で脳裏を過ったのは、花よりもコーヒーとタバコが好きだと言っていたフラワーショップの店主のことだ。

今も変わらず、花よりもコーヒーとタバコが好きだと言いながら、おしゃれな花束を魔法の手で作っていたらいいのだけれど。

その日は、葉牡丹から色々な記憶が引き出され、少しばかりセンチメンタルな冬の夕暮れ時となった。

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