幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

どうでもいい話も、意外と相手を選ぶのでは?

f:id:hiiragi1111:20200127173711j:plain

一月半ば頃のことである。

その日は、少し遅れた新年会の予定があり待ち合わせの場所へと向かっていた。

第一次帰宅ラッシュの時間と重なり、車内は普段よりも混雑しており、入り口付近に立っていたはずの私は、いつの間にか車内中ごろの位置まで押しやられてしまっていた。

車内は、アウターを着たままの大人でぎゅうぎゅうになったことにより温度が上がったのか、のぼせてしまいそうな息苦しさを感じたものだから、思わず天井を見上げて息を吸い込んだ。

目的地に着くと自分の意志で降り口を選ぶことは困難だと判断し、乗客の波に身を委ね降り口へと向かった。

車内から出たときのあの解放感と冬の冷たい空気は、一瞬にして私を生き返らせたように思う。

f:id:hiiragi1111:20200127173647j:plain

今度は人の波に逆らうようにして改札口方面へと向かった。

長いエスカレーターに乗りホッと一息ついていると、私の後ろに立っていた方の会話が耳に届いた。

話声からだけでは年齢や関係性などまでは分からなかったけれど、男性が女性に「どうでもいい話なんだけどさ」と切り出した。

その話がひと段落したのか、しばらくすると再び男性が「これも、どうでもいい話なんだけど」と切り出した。

内容がどの程度どうでもいい話だったのかは存じ上げないのだけれど、背中越しに感じる空気は、とても穏やかで楽し気なものに思えていた。

しかし、エスカレーターが終わる少し手前頃だ。

女性が男性に「私にはどうでもいい話しかしないわけ?」と不満気に言い放ち、空気が一変したのである。

男性の「えっ?」という声と私の心の中の「えっ?」という声がシンクロしたところで、エスカレーターが終わり、事の行方を見届けられぬまま、私は改札へと向かうことになった。

 にこやかな声で相槌を打っていた女性の本心は、穏やかではなかったのだと知り、現実は時に残酷だと思いながらスマートフォンを改札口に当てた。

「私にはどうでもいい話しかしないわけ?」と言った女性の気持ちもわかるのだけれど、どうでもいい話だと前置きをしてまで話したい「どうでもいい話」というのは、心を開いた相手にしかできないようにも思う。

男性は女性に心を開いていて、安心して「どうでもいい話」をしたのだけれど、女性は「どうでもいいように扱われている」と感じてしまったということは、お互いにお互いのことを特別な存在として感じているということなのだけれど、こうして糸は絡まってしまうのか、と思ったワンシーンであった。

f:id:hiiragi1111:20200127173608j:plain

待ち合わせ場所に早くついた私の頭の中にあったのは、エスカレーターの背後にいた2人のことである。

2人の関係性や普段のやりとりを知らぬ私が、勝手にワンシーンだけを切り取って感じたことではあるのだけれど、どうでもいい話も、意外と相手を選ぶように思う。

どうか絡まった糸がすんなりと解れますように。

そのようなことを思いながら、姿を現した友人に手を振った夜。

画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/