街路樹の根元に、小指の爪の先ほどの小さな白い花が咲いていた。
管理会社によって植えられたものではなく、何処からか飛んできた雑草の種が、根を張り、芽を出し、咲かせた花である。
一つの存在に気が付くと、ここにも、あそこにもと、次々に白いそれが自分をアピールしてくるみたいに目に飛び込んできて、冬の名残の景色の中にまたひとつ、春が添えられたような気がした。
白い花を付けているそれが、春の七草のひとつである「はこべら」に似ていたと気が付いたのは、自宅に到着した後だった。
暇つぶしに、春の七草に挙げられているハコベラの画像を検索してみると、私が七草粥で口にしているハコベラが出てきたけれど、昼間目にしたそれとは異なるように見えた。
ハコベラは世界中にある植物で、その種類は100種を超え、日本で目にすることができるハコベラだけでも十数種類もあるようだ。
私が知っているハコベラは、七草粥に入れられる葉野菜で、腹痛薬や胃腸薬といった薬効をもった薬草としても扱われていたというもの。
いつの時代だったか忘れてしまったけれど、ハコベラをすり潰したものを歯磨きペースト代わりに使って、歯肉炎を緩和していたというような話も、何かで読んだことがあり、年末年始の胃腸の疲れを取り除くために七草に入っていることに納得した記憶がある。
しかし、この日私が知ったハコベラの新たな一面は、ハコベラには「ランデヴー」や「愛らしい」といった花言葉が付けられていたことである。
可愛らしい花を咲かせる見た目からは程遠い、大人の香りを漂わせた花言葉だったものだから、そのエピソードを覗いてみたのだけれど、再びイメージを覆されることとなった。
ハコベラの花言葉に使われている「ランデヴー」には、密会や逢引きと言った意味があるけれど、ここでは、人間の恋ではなくハコベラとヒヨコとの出会いを表しているのだとか。
ハコベラは別名「ヒヨコ草」とも呼ばれているそうなのだけれど、ヒヨコが好んで食べる草なのだそう。
だから、ヒヨコがハコベラを見つけるとテンションを上げて走り寄ってくるため、その様子をハコベラとヒヨコのランデヴーということで「ランデヴー」が花言葉に選ばれているのだそう。
花言葉と可愛らしい密会のイメージとのギャップが大きかったものだから、来年の七草粥の頃には、きっと、彼らの密会現場を想像しつつ七草粥を味わうような気がしている。
念のため書き添えておくと、街路樹の根元辺りで花を咲かせているハコベラと七草に使われている葉野菜のハコベラは種類が異なるようなので、くれぐれも、摘んできて食してみようというチャレンジはお控えいただければと思います。
普段は空の方へと意識が向いてしまうのだけれど、春は地中からジワリジワリとやってくるようなので、信号待ちなどのちょっとした時間には、気持ちは上を向いたまま、視線を足元近くへ向けてみてはいかがでしょうか。
自分好みの春を見つけて、感じて、心穏やかな1日となりますように☆彡
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