幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

野生の幸運を召し上がれ。

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旬に入ったこともあり、アスパラガスを口にする機会が増えつつある。

旬の走りならではの美味しさはもちろんなのだけれど、女性に嬉しい栄養をたっぷりと含んでいるし、紫外線量が増えるこの時季には口にしておいて損はない野菜である。

この辺りの話題は過去に触れたことがあるので、今回は、私が海外で目にした少し変わったアスパラガスのお話でも。

ご興味ありましたら、ほっと一息のおともにのぞいていってくださいませ。

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もう随分と遠い日の出会いなので、それがイギリスだったのかフランスだったのか定かではないけれど、馴染みある野菜もところ変われば品種も味も調理方法までも変わってしまうことが面白くて、スーパーではなく市場へ足を運んでいた時期があった。

品物を誰とも会話をせずに買って帰ることができるスーパーは楽だけれど、店員とコミュニケーションを取る必要が多くある市場の方が、良くも悪くも、人や生活をより身近に感じられるだろうという思いもあった。

外国人を毛嫌いする店主もいたけれど、店主の多くは気さくで、野菜や果物、その他の食材を通して多くのことを教えてもらったように思う。

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一番多くお世話になったのは、希少価値が高い旬の野菜や果物を多く取り扱っていた八百屋の店主だ。

女性が3、4人ほどくっついたくらいの大柄の体系をしていたけれど、口癖は「野菜とフルーツでダイエットに成功したんだ」というもの。

顔見知りになってから、それが店主からお客への会話のキャッチボールが始まるサインのようなものなのだと気が付いた。

そのサインに対して、店の奥から店内を見回しているお婆さんが、「息子みたいにならないように(太りすぎないように)野菜とフルーツをたくさん食べて」と言うのだけれど、それもまたお決まりの台詞だったように思う。

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そんな店主がいる八百屋で、春の頃だったと思うのだけれど、見慣れたアスパラガスの隣に、開花する前のムスカリのような野菜の束が並んでいた。

ムスカリというのは、神楽を舞うときや歌舞伎などで使われる神楽鈴(巫女鈴とも)のように見える植物なのだけれど、ぶどうに似ていると言われることが多く、その見た目からブドウヒヤシンス、グレープヒヤシンスという別名を持っている植物である。

そのムスカリを小さく細くしたようなものが束になり並んでいたのだ。

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はじめて目にしたそれに興味が湧いて尋ねると、店主から野生のアスパラガスだと返ってきた。

そのやり取りを聞いていたお客の一人が、野生のアスパラガスの束を取り上げながら「とても珍しいもので、春に運がよければお目にかかることができるかもしれないアスパラガスだから、少し高いけれど幸運をいただくといい」と教えてくれた。

そこまで言われて手に取らない理由はなく、私も一束いただくことにしたのが、野生のアスパラガスとの初めての出会いだ。

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調理方法や食し方は、通常のアスパラガスと同じだと教えられたけれど、そのようにして食すとアスパラガスの味がほとんどしないのである。

その後も縁あって何度か購入した中で辿り着いた私の調理方法は、さっと湯通ししたものにお塩を振りかけるか、お醤油を垂らすかして食べるというものだった。

アスパラガスをもう少し繊細にしたような味とニンニクの芽のような茎部分の食感は、体が内側から息を吹き返すような印象があり、日本の山菜を味わっているかのような懐かしさを感じることができた。

教えてもらった卵でとじるレシピを試したときには、つくしの卵とじみたいだと思ったので、野生のアスパラガスは、日本でいうところの「春の山菜」のような位置づけなのだろう。

野生のアスパラガスは収穫するまでに3、4年ほどの時間を要するとも言われているため、生産者は少ないようだけれど、日本でもチャレンジしてくださっている農家さんがいらっしゃるようだ。

通常のアスパラガスも美味しい季節に突入しましたが、運良く野生のアスパラガスを手にする機会がありました折には幸運を召し上がってみてはいかがでしょうか。

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