幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

古いコインと神様のご機嫌。

f:id:hiiragi1111:20200504171203j:plain

引き出しの奥からずっしりとした重みの箱が出てきた。

重みを感じながら箱を開けると、お財布に入りきらないほどの量の外国コインが入っていた。

外国から帰国した際に、使いきれずに行き場を失ってしまった外国通貨は、ユニセフ外国コイン募金に寄付することもできるけれど、そのうち使うだろうという気持ちを重ねすぎたように思う。

出てきたコインの中には既に使用できないものも多数あり、「思い出」という価値しか持たないコインを前にどうしたものだろうかと思った。

一枚一枚取り上げて眺めてみたけれど、真っ先に出てきた思い出と言えば、自動販売機でお気に入りのチョコレートバーを買うときによく使ったなといようなもので、思わずこの思い出は要るか?と自身に突っ込んだ。

f:id:hiiragi1111:20200504170617j:plain

何かコインにまつわる思い出はないだろうかと新旧を含めた記憶を引っ張りだしていると、随分と遠い日に足を運んだイタリアのローマでの出来事を思い出した。

その中に観光スポットして有名な「トレビの泉(トレドの泉とも)」のことがあった。

トレビの泉(トレドの泉)は、宮殿をバックにしてローマ神話に登場する神様たちの像が配置してある見応えある噴水だ。

この噴水前に広場があるのだけれど、ここに辿り着く道が3本あることから、イタリア語で数字の3を表す「トレ」と道を表す「ビア」の言葉をくっつけて「トレビの泉(トレドの泉)」という名が生まれたと言われている……と記憶している。

私が初めて目にしたトレビの泉(トレドの泉)はライトアップされた夜の景色で、大人びた雰囲気を放っていた。

しかし、時間を問わず大勢の人がコインを投げ入れており、私も例に漏れずトライすることにした。

f:id:hiiragi1111:20200504170420j:plain

トレビの泉(トレドの泉)には、泉を背にして後ろ向きになり、右手に持ったコインを左肩越しに泉の中に投げ入れると願いが叶うという話がある。

しかし、願えば何でも叶うというようなものではなくコインを1枚投げ入れると再びローマにくることができ、2枚投げ入れると愛する人と一緒にいることができ、3枚投げ入れるとパートナーと別れることができるという願いが叶うというものだ。

ローマでは古から、噴水(泉)に向かってコインを投げ入れるのは神聖な行為だという考えがあり、コインを投げ入れると神様のご機嫌を取ることができる、気を鎮めることが出来ると言われているため、トレビの泉(トレドの泉)に限らず、噴水あるところにコインありといった状況だ。

初めてのコイン投げ入れの前に周りを見回すと、1回の訪問で、1度目は1枚、2度目は2枚投げ入れれば一石二鳥だと言っている強者もいたけれど、当時の私は、あまり深く考えずに再びこの地に来ることができますようにという願いを込めてコインを1枚、泉に投げ入れた。

その願いの結果はというと、それから、そう時間を置かずにローマにくることができたのである。

しかし、人は慣れてしまうものなのか、単純に個々の思い入れや好みの度合いによるものなのか。

2度目に目にしたトレビの泉(トレドの泉)に対して、1度目ほどの感動は無くなっていた私は、コインを投げ入れることすらせずに、その場を後にした。

それから随分と年月が経った今、改めて思い返してみたのだけれど、その後ローマに行く機会はないままなのである。

これは、トレビの泉(トレドの泉)に宿る神様のご機嫌を損ねてしまったということだろうか。

いや、きっと。

十分すぎるくらいローマを堪能できたということなのだろうけれど、もう1度コインを投げ入れておいても良かったのかもしれないと思いつつ、箱に詰め込んであった古いコインを眺めた日。

画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/