様々なことが落ち着いたら美術館を巡ろうと思っているからなのか、ここのところ画集のようなものに手が伸びる機会が多い。
美術館巡りをしている気分でページを捲っていたのだけれど、ふと、日本と外国では順路が逆であることを思い出した。
私は外国へ行くと好んで美術館や博物館巡りをするのだけれど、初めて行った外国のそこで妙な違和感を覚えたのである。
しかし、その違和感の正体が何なのか分からぬまま、何度も足を運び続けていた。
その違和感にも慣れてきたころである。
日本語に長けた友人に誘われてとある美術館へ行った折、「日本の美術館とそれほど変わりはないのだけれど、何かが違っているように感じる」という私に友人は、「こっちは右回りだから気持ち悪いんじゃない?私も日本に住んでいたときに同じことを感じたことがある」というのだ。
そう言われて、美術品を眺めながら順路に注目してみると、壁に沿うようにしながら右へ進むように促されており、
日本の美術館や展示会や展覧会を思い返すと、壁を沿うようにして進む点は同じなのだけれど、左へ左へと進んでいく順路が多いのである。
この右回りと左回りの決め手となっているのは、文字を読む際にどちらから読むかという点なのだとか。
人は文字を読まない時でも、文字を読むときの癖で視線が移動するそうで、左から右へと綴っていくアルファベットを見慣れている人にとっては、そのように視線を流しやすい右回りがストレスフリーで
日本語のように縦書きを目にする機会がある日本の場合は、右から左へと視線を流すことに慣れているため左回りがストレスフリーになるという仕組み。
最近では日本語も横書きする機会が多いため、日本人は、右回りの美術館も左回りの美術館も外国の方々ほどストレスを感じることはないのだろうけれど、美術館に限らず、この法則はスーパーやテーマパーク、その他の様々な場所で使われている仕組みなので、やはり日本人は日々の中で慣れ親しんできた左回りに安心しやすい傾向にあるようだ。
このような慣れを上手に利用しているのがテーマパークである。
スリルや非日常を楽しむことを目的としているものは右回りに、安心感をベースに楽しむことを目的としているものは左回りに出来ていることが多いようだ。
そうなると、小さな子どもたちが遊ぶ遊具の中に、地球儀をくり抜いたような形をしたクルクル回る遊具があるけれど、あの遊具に恐怖を感じている子は左回りで楽しむと、もしかしたら恐怖が和らいで遊具を楽しむことができるのかもしれない。
右回りや左回りに気が付いたときには、今回のお話をちらりと思い出していただけましたら幸いです。
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