真っ赤なテーブルクロスを洗った。
12月のホームパーティーと言えば聞こえが良いけれど、早い話、家吞みのときに使用するイベント時専用のクロスである。
柄に凝ったこともあるのだけれど、食器や料理との相性を考えた結果、シンプルな無地のものに落ち着いた。
これから夏がくるというタイミングだけれど、今年の冬も使うことができますように。
そのような思いも込めて丁寧に手洗いをした。
軽く脱水した後、日光消毒も兼ねて外に干した。
風に靡く真っ赤なテーブルクロスを眺めながら、前日に作っておいたババロアとアイスティーで一息つくことにした。
甘さ控えめに作ったババロアに添えたのはレモンのコンフィチュールだ。
爽やかな香りと皮の苦みがババロアを大人仕様のデザートに変身させてくれた。
グラスの中にゴロゴロと詰め込んだ氷もすぐに小さくなり、私の苦手な夏がすぐそこまで来ているのだと思った。
ベランダで靡く真っ赤なテーブルクロスを眺めていたら、闘牛士がマントをひらひらと操る様子を思い出した。
2度ほど、闘牛場見学をしたことがあるけれど、そこは既に「かつて闘牛が行われていた場所」として紹介される観光スポットのような場所と化していた。
そして、闘牛に馴染みが薄い私の目には、映画フィルムの中の世界のような、良い意味で古びた場所のように映った。
闘牛にも確かな歴史や文化があるのだけれど、年々、動物保護の観点から過去のものになりつつあると聞く。
闘牛に限らず、世界には動物同士を戦わせる競技、競技という表現が正しいのか分からないけれど、そのような歴史や文化が多数あるけれど、それらも闘牛同様に廃止への流れにあるのだとか。
そのような話を案内人から聞いていたのだけれど、その時に闘牛士がひらひらと操っている赤いマントの話もあった。
多くの人が、牛はマントの赤い色に興奮して向かってくるのだと思っているけれど、牛は色を識別できない動物なのだそう。
見えているものは全て白から黒のグラデーションで見えているらしく、人間が赤いマントを使おうが黄色いマントを使おうが、白と黒の濃淡でしかないとのこと。
だから、マントの赤い色に興奮しているのではなく、ひらひらと風に靡く様子に興奮してマントに向かってきているのだ。
猫じゃらしのような仕組みである。
しかし、そのマントの赤い色に興奮するものがいるという。
それは、闘牛を見ている人間。
カラーセラピーで赤い色は、見る人や使う人に元気を与えたり、ストレスを緩和したりすると言われている。
他の色よりも刺激が強いことから、興奮させたり闘争心を刺激したり、様々な欲求を刺激する色でもあることから、販売広告や商品パッケージに使われることも多い色なのだけれど、
闘牛場では古より赤色の力を上手に使い興奮と元気、ストレス緩和などを人に与えていたということのようだ。
一見、牛の気分を操っているように見えていた闘牛士の赤いマントだけれど、ターゲットは人だったなんて。
そのようなことを思った記憶を、ベランダで靡く真っ赤なテーブルクロスを眺めながら思い出した日。
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