幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

クチナシとゴーストライター。

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用事を済ませに外出すると、クチナシの香りが風に乗ってやってきた。

香りの出所に心当たりがあり、少しだけ遠回りをして目的地へ向かうことに。

丁寧に切りそろえられたクチナシの垣根に散らばる艶やかな白は、湿度が上がるこの時季に清涼感を与えてくれるように思う。

この場所のクチナシの花を始めたみたとき、私の知っているそれとは少し異なる形状そしており、クチナシにも様々なタイプのものがあるのだと知った。

この場所を彩るクチナシはシンプルな一重タイプなのだけれど、クチナシには八重タイプ、芍薬やバラのように大輪タイプなどもある。

私は、大輪タイプを目にする機会が多かったのか、クチナシと言えば大輪を思い浮かべるのだけれど、ここ数年、この場所で目にする、一重タイプが持つ静かな艶やかさもいいものだと感じている。

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クチナシの柔らかくて瑞々しい若葉は、蛾の幼虫に狙われやすそうで、クチナシは育てることが難しい庭木だと聞く。

柔らかい葉を持つ春キャベツや、瑞々しい新玉ねぎを美味しいと感じる人間と同じなのだろう。

幼虫たちにとっても、この時季ならではのご馳走のようである。

知人が以前、殺虫剤を使わなければ、クチナシの葉はあっという間に爪楊枝状になり美しさが半減するから殺虫剤を使いたけれど、

彼らは生きるために、私は美しいクチナシを見るために縄張り争いをしていると思うと、罪悪感に似た気持ちが湧くことがあるのだと話していた。

弱肉強食だと割り切るか、共存するべきか、その他に何か良いアイデアはある?と尋ねられ、あの時の自分の答えを思い出せずにいるのだけれど、今の私なら、共存の道を探すと答えるように思う。

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この時季に咲く、大きめの白い花と言えばタイサンボクもそうだろうか。

タイサンボクと聞くと正直、なんだそれ?と思ってしまうのだけれど、モクレンやマグノリアなど近しい植物で、香りの良さも共通点のひとつである。

時折、マグノリアと名付けられた華やかな香りに出会うことがあるけれど、マグノリアと名が付く香りに使われている香り成分は、このタイサンボクのものだという。

タイサンボクと名付けるよりもマグノリアと名付けた方が、人間にとっては都合が良さそうだとは思うけれど、替え玉のような、ゴーストライターのような立ち位置のタイサンボクを不憫に思い、タイサンボクとは?と調べたことがあった。

すると、タイサンボクはもともと、「大盃木」このように書いてタイサンボクと呼んでいたとあり、きっかけは、大きくて立派な花びらが、まるで盃(さかずき)のようだという風流な視点だった。

これが後に、タイサンボクの花びらだけに注目するのではなく、大きくて立派な木であることにも目を向けられて泰山木(タイサンボク)と記されるようになったのだそう。

タイサンボクにしてみれば、何と呼ばれようが構わないのかもしれないけれど、マグノリアの香りに触れる度に古の風流な視点を思い出すタイサンボクである。

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そのようなことを、ぽつり、ぽつりと思い出しながら目的地へ向かっていたのだけれど、ふと、花屋にクチナシの切り花など置いてあるのだろうか、と思う。

私が足を運んでいる花屋で見かけた覚えはないのだけれど、室内に一輪、飾りたいこの頃である。

先日も梅雨時季の香りのカラクリについてお話させていただきましたけれど、この時季は普段よりも花の香りをキャッチしやすい時季でもあります。

また、クチナシの香りは幸運を運ぶ香りだとも言われておりますので、外出する折には、草木や花の香りを楽しみつつ、今回のクチナシやタイサンボクのことをチラリと思い出していただけましたら幸いです。

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