幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

消えてしまいそうなロゼッタと海を渡ったロゼッタと。

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近所にあるパン屋の前を通ると店のシャッターが閉まっていた。

店休日に来てしまったかと思いながら貼り紙を見ると、閉店のお知らせが記されていた。

数日前は、良質なお肉を取り揃えている精肉店で似たような貼り紙を目にしており、「またか……」と複雑な思いがした。

立て続けだったこともあり、少し離れた場所にある別のパン屋へ行ってみることにした。

立て看板が出ていることに安堵し、焼き立てパンの香ばしい香りが出迎えてくれる店内へと足を踏み入れた。

何か様子が違うような……そう思っていると、全てのパンが袋詰めした状態で並んでいることに気が付いた。

様々なことに配慮してくださっており、安心して手にとることができる状態を有難く思うのと同時に、店頭に並べるまでに要する時間や手間を思うと大変だろうなとも感じた。

新しい日常を経験しながら、お目当てのパンをトレイに乗せ終え、店内をもう一回りしていると、ロゼッタが目に留まった。

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ロゼッタとは、イタリアローマの伝統的なパンのひとつで、ハンバーガーに使われているバンズのような形で中は空洞、見た目はバラで、食感はしっとりタイプと、フランスパンの表面のようなカリカリッとしたタイプの2種類がある。

これを横にスライスして中の空洞部分に好きな具材を挟んで食べるのだけれど、ヨーロッパでは、ハムやチーズ、煮込んだお肉やクリームチーズなどを好きに挟んで、食事やデザート、おやつとして楽しまれていたように思う。

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ロゼッタの名は、バラの見た目から名付けられているのだけれど、これはロゼッタ専用の型を使って作られている。

しかし、ここだけの話なのだけれど、私は一度もロゼッタをバラだと思ったことがないのである。

それどころか、これがバラ?という印象強かったからなのか、ロゼッタとうパンが深く記憶に刻まれているようだ。

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このロゼッタ。

日本では、割とよく目にするパンのひとつなのだけれど、本場では年々、姿を消しつつあるパンだという。

使用する材料はとてもシンプルなのだけれど、作業工程が多い上に、時間をかけてゆっくりと焼く必要があり、非常に手間暇がかかることが原因のひとつなのだとか。

他にも、儲けが少ないことを嘆く職人がロゼッタを作らなくなったり、作りはするもののより安価な材料で作るなどしたことから味が落ち、お客がロゼッタから離れつつあるともきく。

「伝統の○○」と言われるものが本場から姿を消し、異国の地で親しまれるといったことはよくあることだけれど、ロゼッタもそうなりつつあるようである。

ちなみに日本では、しっとりタイプのものが好まれているのか、こちらのタイプをよく目にするように思う。

正直な印象としては、本場で食べたそれよりも数段美味しく、日本人好みに寄せられたロゼッタのようにも感じるのだけれど、ローマの伝統に思いを馳せるには十分。

機会があれば本場で是非と言いたいところではありますけれど、なかなか難しいご時世ですので、機会がありましたら、旅行気分で日本版ロゼッタにトライしてみてはいかがでしょうか。

その時には、今回のお話をちらりと思い出していただけましたら幸いです。

※今回のパン画像は全てロゼッタです。

画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/