これまでの日常が、ニューバージョンに進化して戻りつつあるこの頃、至る所で目にする「新しい」に関心しきりである。
やってみて分かることは非常に多く、私たちが当たり前だと思ってきたことの多くも、先人たちが今の私たちのように試行錯誤して作り上げたものなのだろうと思った。
その日、近所のクリーニング店の前を通ると、普段は見かけることがない列ができていたため、何事だろうかと視線を向けると、何のことは無い。
お客自ら、「店内に入るのは一人ずつ」という暗黙ルールで並んでいたのだ。
狭い店舗ではないのだけれど、より安心に、より安全にということだろう。
自主的に、自分のことと同じように相手のことも大事にできる国民性に静かに感動してしまった。
そう言えば、少し前に目に留まったニュースキャスターがいる。
外国のニュースキャスターだったのだけれど、彼は、お願いされただけで自主的に行動を制限できる日本人を称賛しながらも、不思議でたまらないといった口ぶりだったのだ。
この光景を彼に見せたら、今度はどのようなリアクションを取るのだろうかと興味が湧き、既に顔も忘れてしまった名も知らぬ彼を思い出しながら、日本には世界に誇れるものがたくさんあると改めて思った。
いくつかの用事を済ませた後は、人通りが少ない道を選んで散策しながら帰宅することにした。
この時季は、様々な色をした花が咲いており、目の保養をするのにもってこいである。
ここにも、あそこにもと宝石の欠片でも探すかのように、視線を流していると、大きな倉庫のような建物の前に、「頭上にツバメ一家がいます!皆で見守りましょう!」という貼り紙があった。
視線を上へと向けると、小さなツバメの巣から4~5羽ほどのツバメのヒナの頭が見えた。
顎の辺りはピンクベージュ色の毛が素敵な模様を描いており、目の下、人で言うところの頬骨辺りには白いラインがスーッと引かれていて、思わず、ツバメってなかなか洒落たデザインをしていると思った。
そのツバメのヒナたちが急に口を開けて鳴き始めると、返ってきた親ツバメが採りたての餌をヒナの口に入れ、再び餌の調達へと飛び立った。
すると、すぐに母親だろうか父親だろうか。
入れ替わるようにして親ツバメがヒナに餌を与え飛び立った。
この流れが3回、間を開けずに行われたのである。
親が3羽。
そう、このツバメ一家にはヘルパーツバメがいるのである。
ツバメという鳥は、とても興味深い鳥で、パートナーが見つからなかったのか先立たれたのか、理由は分からないけれど、シングルの雄ツバメが、既にペアになっている雌ツバメを略奪しようと、タイミングを狙ってちょっかいを出すことがある。
その一方で、パートナーが見つからなかったり、ヒナが育たずに死んでしまったなど、何らかの理由でシングルでいるツバメが、他のツバメ一家を手助けして毎日ヒナたちに餌を届けることもあるという。
このような場合、親とヘルパーツバメの間にも信頼関係が出来上がっているのか、親ツバメがヘルパーツバメを警戒することもないそうだ。
この日は、思いやりと愛がナチュラルに存在しているクリーニング店の光景とツバメの光景に、気持ちがぽわっと温かくなったように思う。
受け取った「ぽわっ」を、次は私が、私なりのカタチで。
そのようなことを思った日。
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