雨上がり、自宅のベランダから外を眺めていると、少し離れた場所にある花壇で咲く立葵(タチアオイ)が目に留まった。
初めて目にする花の名だと思われた方は上の画像を、もう一度ご覧ください。これが立葵(タチアオイ)です。
立葵(タチアオイ)は、この時季に咲く花で、幸せのレシピ集の中でも触れたことがあるのだけれど梅雨入りと梅雨明けを知らせてくれる植物でもあることから梅雨葵という異名も持っている。
5月辺りから咲き始め、空へ向かって真っ直ぐに伸びた茎に付いた蕾は、下部から上部に向かうように順に開き、一番上の蕾が開く頃には梅雨が明けると言われている。
実際に、自宅ベランダから見える立葵(タチアオイ)も、日に日に空に近づいていくような雰囲気を放ちながら咲いており、
それを見る度に、このジットリとした梅雨の日も着々と終わりに近づいていることを知るのだ。
外でお茶でもと思ってグラス片手にベランダに出てはみたものの、そのジットリとした空気に負け、早々に除湿冷房で快適に整えた室内へ引っ込んだ。
立葵(タチアオイ)を眺めながら、立葵(タチアオイ)くらい上手に自然のリズムに乗ることができたら心地良さそうだと思ったりもしたけれど、自然のリズムに乗るのもラクではないようである。
いや、ラクではないと思ってしまうのは、いつの間にか自然のリズムから遠い場所に身を置いてしまっていることなのだろう。
少し前に、梅仕事に関する話題に触れる機会があった。
私は気まぐれで梅仕事をしたことはあっても、梅仕事をする習慣はない。
それでも、大量の梅やガラス容器をスーパーで目にすると、もうそんな時季かと季節の移ろいに触れて、気持ちが豊かになるのを感じるのだ。
よく考えてみれば、梅はよくできた果実である。
食中毒が起こりやすくなる時季に収穫期を迎え私たちのもとに届くけれど、このタイミングで梅仕事をすれば、暑さでバテそうになる前にはミネラルやクエン酸補給、殺菌作用などを一度に叶えることができる梅干しや梅シロップなどが出来上がるのだから。
どなたが始めたことなのかまでは存じ上げないけれど、計算しつくされた貴重な知恵である。
知恵と言えば、梅雨が明けると虫干しの季節がやってくる。
私は古い本やお気に入りの洋服などを、無理をしない範囲内で虫干しするのだけれど、真っ先に虫干しするのはシルクが使われた色々である。
いつだったか、当時お世話になっていたクリーニング店の店主に教えていただいたのだけれど、シルク製品は大事に仕舞い込んだままにしていると糸が痩せてしまうため、
梅雨が明けてお天気が安定したころに虫干しをして湿気を取ることで、生地が生き生きと甦るというのだ。
梅やシルクに限らず天然素材は自然のリズムと呼吸を合わせると、100%以上の本領を発揮できるということなのかもしれない。
人もまた然りということなのだろうと、除湿冷房で快適に整えた室内で思った日。
関連記事:
画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/