幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

ハジマリとゴール。

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高架下にできた空間を利用した小さな公園の前を通ると、マスク姿のご年配の方がベンチに腰掛け囲碁のようなものを楽しんでいた。

それぞれの手には団扇が握られ、ベンチの端には給水用のペットボトルと水筒が置いてあった。

熱中症ケアは大丈夫なのだろうかと思うや否や、大きな風が高架下を吹き抜けた。

通り過ぎてからも会話などは一切聞こえず、耳に届いたのは碁石か将棋の駒か、カチッ、カチッという音だけだった。

そして、マスクさえ無ければ、古い映画の中に登場する風情あるワンシーンのようにも見えた。

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そう言えば、どこで目にした話だったかは、すっかり忘れてしまったのだけれど、あるビジネスマンが、とある漁村で出会った漁師と交わした会話が収められた話があった。

その漁師が乗っていた小さな船には、釣り上げた大きな魚が数匹あったという。

これを見たビジネスマンは、漁師に言った。

「もっと沖へ行ってたくさん魚を獲ってきたらどうだい?」と。

漁師は、「家族を養うには十分な量の魚なんだよ」と答えたという。

これに対してビジネスマンは、「そうは言っても、有り余った時間で何をして過ごすんだい」と尋ね、漁師からは、「漁へ出ていない時間は、朝はゆっくりと起きて、気が向いたら釣りを楽しむんだ。あとは、子どもと遊んだり、妻との時間を過ごしたり、昼寝もするさ。そして、日が暮れたら酒を飲みつつ友人たちとギターでも奏でながら、気ままに過ごすんだよ。こう見えて俺は、忙しい毎日を送っているんだ。」と返ってきた。

しかし、会話はここで終わらず、ビジネスマンは自分の考えをもとに漁師にアドバイスしたのだ。

「忙しい毎日を送っているかもしれないけれど、あなたはもっと漁へ出るべきだ。そうすれば収入が増える。収入が増えたら、それを元手にして大きな船を買うといい。そして、魚の捕獲量を増やして従業員も雇うのさ。そうすれば、今度は獲った魚を加工して売り出すことができる。収入は、今の何十、何百、いや、何千倍にも膨らむはずだ。」と。

漁師が、「そんなに働いて、儲けてどうするんだい?」と尋ねたという。

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するとビジネスマンは、「そうすれば、あなたは一生仕事をしなくて済む。田舎の漁村に引っ越して、必要な分だけの魚を獲り、それ以外の時間は、朝はゆっくりと起きて、気が向いたら魚釣りでも楽しんで、子どもや孫たちと遊び、妻との時間を過ごし、昼寝だってすればいい。日が暮れたら酒を飲みつつ友人たちとギターでも奏でながら気ままに過ごすのさ。こんな生活、最高だと思わないかい」と答えたという話である。

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私の記憶を辿ると、粗方このような話だったのだけれど、様々な捉え方、感じ方ができる話で、一筋縄ではいかぬ見方もできる面白い話だという印象を受けた。

答えはひとつではなく、良いも悪いもないけれど、感じたことを通して自分が本当に願っていることを知ったり、今の自分が大事にしているモノゴトを知ることができたり、知らぬ間に迷い込んでいる迷路の出口を見つけられたり、自分を縛っている見えない鎖の正体に気付くことができるように思う。

どのようなときも、どのようなことも、自分次第である。

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