友人から届いたメッセージに絵文字がズラリと並んでいた。
使われていたのは、人が叫んでいるような顔をした絵文字である。
ムンクの叫びを元にデザインされたように見える、その絵文字を眺めながら、あの作品のことを思い浮かべた。
私たちが「ムンクの叫び」と呼んでいるあの作品は画家であるムンクが描いた『叫び』というタイトルの作品である。
ムンクが描いた『叫び』という作品という意味で「ムンクの叫び」と言われているのだけれど、あまりにもその呼び方に慣れてしまい、「ムンクの叫び」という名の作品だと思い込んでしまっている方も多いように思う。
そして、そのタイトルだと思い込んでいる呼び名が原因なのか、あの作品に登場すり人物らしき存在は叫んでいると思っている方も、意外と多いのではないだろうか。
あの作品は、ムンクが体験した幻覚をもとにして描かれたもので、叫んでいる姿を描いたものではないと言われている。
ムンクは、あの作品について、このような内容のことを書き残しているという。
私は友人たちと太陽が沈みかけの中、歩道を歩いていた。
すると、空が血のように赤く染まり始めた。
私は疲れたものだから柵に寄りかかって休んでいると、青黒いフィヨルドと町全体が血と炎で覆われるようだった。
友人たちは歩き続けていたけれど、私はその場から動けずに不安を感じて震えながら、自然を突き抜けていくような叫びを聞いた、と。
このような内容のメモから、この作品の中に登場する人物はムンク自身で、彼は叫んでいるのではなく、耳を塞ぐような姿勢で叫びを耳にして驚いているのだと言われている。
私はスクリーム(叫ぶ)という単語を見聞きすると思い出す出来事がある。
随分と遠い日の出来事なのだけれど、知人のフランス人宅で2週間ほどお世話になっていたときのことである。
ちょうど今頃の季節、そのお宅近くで新聞に載るような事件が起きた。
時刻は真夜中だったのだけれど、事件に遭遇した女性の悲鳴が辺りに響き、その声の主が日本人女性だったらしいという情報が近所を駆け巡った。
そして、私が遊びに来ていることを知っている近隣の方々が「お宅に遊びに来ている日本人女性が、夜中に家を抜け出して事件に巻き込まれていないか確認した方がいい」と知人家族に伝えに来たという。
私は騒ぎにも気が付かないほどに、ぐっすりと眠っていたのだけれど、部屋に押しかけてきた知人家族から大きな声で名前を呼ばれた後「あなた叫んだ?」というのである。
正確には、「叫んだのはあなたじゃないわよね?どこも怪我していないわよね?」と言われながら体をベッドから起こされて頭や顔、体をチェックされたのだけれど、急な出来事だったこともあり、状況が掴めぬまま、突然の英語に頭が混乱したのだろう。
私にはスクリーム(叫ぶ)という単語がアイスクリームと聞こえたものだから「アイスクリーム食べる?」と聞かれたと推測し、「私はお腹いっぱいだからアイスクリームは結構です。」と返したのだ。
当然の如く知人家族は大笑いし、寝ぼけるくらいぐっすり寝ていたようだから事件には巻き込まれていないと言って部屋を出て行ったという出来事である。
それからしばらくの間、私はスクリームとアイスクリームの単語でいじり倒されることになったわけなのだけれど、ムンクの『叫び』を目にしたときにも薄っすらとスクリームエピソードが頭に浮かぶのである。
ムンクの作品『叫び』を目にする機会がありました折には、私のスクリームエピソードではなく、『叫び』の真実をチラリと思い出していただけましたら幸いです。
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