ある日、デパートのフロアで小さな女の子が
ガラスケースに入れられているテディベアをじーっと見上げていた。
大きさに関わらず、丁寧に作られたテディベアは、
一体、一体が今にも動き出しそうな独特な空気を纏っていることが多いように思う。
私自身はコレクターではないのだけれど、
そのようなテディベアを目にすると、しばし見入ってしまうことがある。
フロアで見かけた小さな彼女も、
ガラスケースの中のテディベアに知らぬ間に魅了されたのだろう。
テディベアもさることながら、
それを見上げる彼女もまた可愛らしい空気を纏っていて微笑ましかった。
テディベアと言えばドイツのシュタイフ社が有名なので、
シュタイフ社のテディベアのコンセプトである
高品質の材料を使って手作りし、手足と首が動くクマであること。
という条件を満たしたいるようなクマのぬいぐるみを
私たちはテディベアという物だと認識しているようです。
しかし、実際にテディベアという名前にそのような定義はなく、
クマのぬいぐるみ=テディベアというのだから、
くまモンもテディベアのくまモンというわけです。
ただ、どうしてテディという名前がついているのかと言いますと、
第26代セオドア・テディ・ルーズベルト大統領のエピソードが元になっています。
今回は、そのエピソードを少し。
ルーズベルト大統領は子供の頃からクマのぬいぐるみがお好きだったようで、
大統領になってからも執務室に飾っていたのだそう。
このようなお話が残っている一方でクマ狩りも楽しまれていたようなので、
私としては少々腑に落ちない気もしているのですが……、
お話を進めますね。
ある年、ルーズベルト大統領はクマ狩りをするために
お付きの人や新聞記者を引き連れてルイジアナ州へ行きました。
しかし、いざクマ狩りを始めてみるとルーズベルト大統領だけ獲物(クマ)を
狩ることが出来ません。
そこで、お付きの人は、
もしもの時の為に用意しておいた小さなクマを差し出し、
ルーズベルト大統領に、この子熊を狩ってくださいと言ったのだとか。
このお付きの方、正直な方だったのでしょうね。
ネタバレもいいところです。
狩りを楽しめていないルーズベルト大統領ではありましたが、
これには流石に嫌気がさしたようで、
「それはスポーツマンシップに反する、子熊を放してやれ」と言い
その狩りをやめたのだそう。
この出来事を狩りに同行していた新聞記者が翌日の新聞に、
心優しい大統領のエピソードとして掲載し話題になりました。
さらに、この話題に素早く便乗したのがニューヨークのおもちゃメーカです。
クマのぬいぐるみを
セオドア・テディ・ルーズベルト大統領の愛称「テディ」にちなんで
「テディベア」と名付けて売り出したところ、大ヒットしたのです。
この出来事以降、クマのぬいぐるみはテディベアと呼ばれ、
世界中で親しまれるようになりました。
もちろん、クマのぬいぐるみ好きでも知られていたルーズベルト大統領の
クマ狩りのエピソードには賛否両論あったようなのですが、
あらかた、美談として知られているお話です。
本来、凶暴な動物でもあるクマですが、
コロンとしたフォルムや、ゆったりと歩く様子が人々を魅了するのか
クマのキャラクターを至る所で目にします。
イギリス、ロンドンに在る老舗デパートのハロッズには、
「ハロッズの店内には昔から、あちらこちらにテディベアが住んでいる」
という言い伝えがあります。
そして毎年、その年のテディべアが一点「クリスマスベア」と呼ばれ販売されます。
左足にロゴと年号が刺繍で入れられているので、
お祝いごとの時やその他、記念のしるしとして贈られたりもします。
このハロッズのクリスマスベアは日本でも目にしたり、
購入もできますが日本では「イヤーベア」と呼ばれています。
「クマのぬいぐるみ」と言うと少々味気ないけれど
「テディベア」と呼んでみるとグッと愛着が湧いてくるようで不思議ですね。
テディベアを見かけましたら、
今日のお話をチラリ思い出していただけましたら幸いです。
今日もあなたの一日が優しい色に染まりますように。
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