スイカが並んでいた記憶が消えぬうちに、陳列棚の上には数種類の梨が並べられていた。
夏のフルーツから秋のフルーツへと変わると、いよいよ秋だなと思う。
夏を苦手としている私にとって秋の到来は待ち侘びていたものなのだけれど、去り行く夏を見送るのは名残惜しくもあり、ほんの少しだけ、本当に少しだけ、来年の夏を楽しみに思う気持ちがぽわっと湧くのもこの時季ならではである。
どの梨を持ち帰ろうかと悩んだ末、赤梨と青梨からひとつずつ選ぶことにした。
日本で収穫される梨の品種は色々とあるけれど、赤梨(あかなし)と呼ばれる梨と青梨(あおなし)と呼ばれる2種類の梨にざっくりと分類することができる。
見分け方は簡単で、赤みがかった褐色色をした日本梨「幸水(こうすい)」や「豊水(ほうすい)」などは赤梨(あかなし)に、黄緑色をした日本梨「二十世紀(にじゅっせいき)」などは青梨(あおなし)に分類される。
梨は古くから食べられているフルーツで、歴史を遡っていくと弥生時代に造られた古墳跡から既に梨の種が発見されたという話がある。
もともとは、大陸から持ち込まれたそうだけれど、大きくて硬さがある当時の梨は、上手に保存をすれば半年ほどもったそうで、水分やビタミン、ミネラルなどを補うことができる大切な保存食のひとつだったようだ。
保存食として注目されていたことが分かるエピソードとしてよく取り挙げられているのが、日本書記に記されている、持統天皇が国民に梨の栽培をすすめたという話。
持統天皇は、「お米」や「ひえ」などの穀物栽培だけでは心許ないから、他にもいくつかの食材を育てるよう勧めており、そのいくつかの食材の中に梨や栗が挙げられているのだ。
私たちにとって梨はデザートにいただく美味しいフルーツだけど、梨は美味しいだけではない、レスキューフルーツということのようだ。
実際に、美味しさはご存じのとおりなので割愛するけれど、あのシャリシャリとした癖になる食感を出している成分は、食物繊維と腸内環境を整える成分が豊富に含まれているという。
他にも浮腫みを取り除き、余分な塩分を排出するよう働いてくれるカリウムや、肝臓の機能を整えてくれるタンニン。
他にも、疲労回復や二日酔い、便秘の緩和、喉の傷みや違和感を取り除くよう働いてくれる成分もたっぷりと含まれているため、夏から冬を繋ぐ、秋にこそ食べたいフルーツである。
旬を意識しなくても一年を通して食べることができる食材やフルーツが多い昨今だけれども、旬の食材を知ってみると、その時季の体に必要な栄養を豊富に含んでいることがほとんどだ。
そのことに気付かされる度に、旬を意識して過ごすことは、確かな健やかさの土台作りにも繋がるのだと思ったりもする。
旬を五感で楽しむことは、ココロとカラダの双方を豊かにしてくれます。
ココロとカラダは私たちが思っている以上に繋がっているので、
移り行く季節を、どうか思いっきり、
好きも嫌いも含めて丸ごと自分らしく楽しんでくださいませ。
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